星野号デモ〜止揚(アウフヘーベン)したベンチュリーポンプ〜 by B

案の定、平沼氏・与謝野氏の新党の評判は芳しくありませぬ。特に、参加政治家の高齢さを揶揄するマスコミ報道が目立ちますね。

後期高齢者医療制度のネーミングがけしからん!!」などと言ってたのと同じ舌とは思えませぬ。品がないですな。

「何がやりたいのかがハッキリしない。」などという論評も、どのニュース番組でもコメンテーターが異口同音に述べておりますが、与謝野氏や平沼氏がちゃんと説明しているのに、そこをカットして放送し、インタビュアーが「良く分からない。」と言ってるわけですから、「私は理解力がないアホです。」と言ってるようなもんです。まぁ、この党は左翼マスコミからは歓迎されざる党でしょうから、こういう苦労はついてまわるでしょうねぇ。

とは言え、新党名が「たちあがれ日本」ですか・・・。個人的には「保守党」「保守新党」などのネーミングは奸雄・小沢氏に既に使われておりましたので仕方がないですが、「大日本帝国党」とか「新党 国益」などの、かなり右がかった党名を期待していただけに、残念です。

どうやら、この新党は、小生やネトウヨ達が期待している政党とは少し趣旨が違いそうですね。参加メンバー、そして、党名を見ているとおぼろげながらも趣旨を感じ取る事ができます。また、書き出すと止まらなくなりますので、新党ネタは次回以降に書かせていただきます。

さて、今週からデモを開始している星野号に関してです。初めてこのブログをご覧になられた方は、何の話かサッパリわからないですよね・・。軽く説明します。星野号はB社が出してきた新世代の白内障手術マシーンです。

B社は「ベンチュリーポンプ」が売りの眼科手術器機メーカーです。ベンチュリーポンプの特性は「閉塞しなくても一定の吸引圧が得られる為、核が寄ってきて手術しやすい」というメリットと、「チップ開放後も設定吸引圧のままなので、サージが激しい」というデメリットが同居しておりました。

Bは前世代機である千年紀号の使用経験はありません。勤務医時代、A社のアキュラス号を白内障手術時にもメインで使用しておりました。当時、通常の硬さの核なら吸引圧150mmHg、硬い核は200mmHgの設定でやっておりましたが、そんな可愛い吸引圧でも、時には荒馬に乗っているかのような不安定さの中で手術をやっておりました。ちなみにBは(徳田先生や大木先生には申し訳ないですが)slow surgeryには全く興味がなく、比較的high vacuumで手術をやってしまいたい派でございます。現在の趨勢は、ソフトコンタクトレンズ派がハードコンタクトレンズ派の数を圧倒している如く、ペリスタリックポンプが主流となり、ベンチュリーポンプ派の先生は少数派になっていたことと思います。

哲学者ヘーゲルは、「古いものが否定されて新しいものが現れる際、古いものが全面的に捨て去られるのでなく、古いものが持っている内容のうち積極的な要素が新しく高い段階として保持される」とし、「止揚 アウフヘーベン」という言葉を用いて説明しようとしました。私は高校時代に習いました。そして、弁証法的思考として、「世の中はらせん階段のように進化していく(古いものが再登場し、しかも高い次元のものとなって進化していく)」と説明しましたが、これはこの世の中の真理の一つであろうと思います。

この星野号に搭載されている「ロータリーベーンポンプ」および「ステーブルチャンバーパック」は、今までのベンチュリーポンプによる白内障手術を、「らせん階段」のように、ワンステージ上に押し上げてしまいました。凄く良かったです。

ほとんどの先生にとっては釈迦に説法かと思いますが、手術をやり始めたばかりの若い先生もこのブログをご覧になられているかも知れないので、軽く説明させて頂きます。

白内障手術では、小切開になればなるほど「創口のタイトさによる灌流量の減少」や「超音波チップ径が小さくなることによる吸引効率の減少」という欠点が発生いたします。これに関してはベンチュリーもぺリスタもなく、共通の課題でございます。ペリスタリックポンプシステムは、吸引流量は一定であり、チップが閉塞すると設定吸引圧まで上がっていくという構造で小切開化によるメリットは何も生じません。一方のベンチュリーポンプシステムは吸引圧をポンプがグルグル回って作り出します。吸引する所の抵抗が増せば増すほど(チップの口径が小さくなればなるほど)、引き込む水の量が少なくても高い吸引圧が得られてしまうわけですので、小切開化になればなるほど、前房安定性が増す、すなわちメリットということになります。

さらに、星野号はもう一工夫加えており、破砕、吸引した核が一番後ろの排液パックにまでいかずに、吸引チューブ途中のマイクロメッシュフィルターにトラップされるようになっております。水は、フィルター外側の細〜い通路を通らねばならず、これがまた抵抗となり、さらなる前房安定に一役買っております。(これが、この器械の弱点でもあるのですが・・)

このStableChamber Fluidics Systemを用いて、MICS手術(角膜切開創2.2〜2.5mm)をすると、これまでのベンチュリーポンプでの白内障手術とは別次元の安定性が得られます。

B社の測定結果では、

吸引圧(mmHg)  吸引流量(cc/min)
200    →  20
300    →  27
400    →  35
500    →  41

となります。小生はCV24000号で、吸引圧350〜400mmHg、吸引流量35cc/minの設定で手術をしておりましたので、だいたい、ペリスタリックポンプシステムと変わらない安定性で手術が可能ということがおわかり頂けると思います。それに加えて、どんどん核が寄ってくるというわけでございます。

ちなみに、ノーマルチュービングでは、

吸引圧(mmHg)  吸引流量(cc/min)
300 →  45

となっておりますので、マイクロメッシュフィルターはとっても有効なんですね〜。

私は、吸引圧350mmHgで手術をし始め、ちょっとずつ吸引圧を上げて行きましたが、400mmHgになると若干不安定さも感じました。個人的な感想では、柔らかい核なら300mmHg前後、硬い核なら380mmHgまでで良い感じ、いちいち設定を変えるのが面倒な先生は350〜380mmHgの固定で、十分安定感のあるオペが出来るのではと思いました。

ここからは、欠点も少し述べておきます。絶賛しているマイクロメッシュフィルターですが、手術学会のランチョンセミナーで聞いた通り、諸刃の剣であります。パックを連続した症例で使っている施設では、数例で詰まってしまい、交換せねばならないです。grade5のウルトラハード核の手術をした際は1例で核がギッチリ詰まってしまいました。

ここが非常に惜しい点でございます。1例毎交換の施設なら何の問題もない点ですが、そういう施設は日本では少数派であると思われます。。願わくば、マイクロメッシュフィルター部分のみ交換可能になれば、解決するのですが・・・。

私が思うに、B社は基本的に米国のユーザーの事しか考えてないようです。訴訟大国米国では最近、少々コストがかかっても訴訟の際に有利に運べるように、チップも鑷子も何もかもディスポらしいので、当然、チューブも1例毎交換を想定して作成しているのでしょう。(プリオンによる感染症を危惧しているようです。実際にチューブが原因で感染症になる事は考えづらく、個人的にはナンセンスなdefensive medicineだと思いますがねぇ。米国人がプリオンを恐れている割に、他国への牛肉輸出には無頓着なところは、如何なもんでしょう?)

あと、もう一点述べるとすれば、フェイコチップ用のスリーブが非常に硬いです。おそらく、あれだけ硬いので、創に圧迫されても灌流量が減ることもなく、極小切開創でも安定した手術が出来るのだと思いますが、創口から入れる際に少々苦労します。



星野号は、現時点ではベンチュリーモードしかデモしていないので、後半はぺリスタモードでもデモする予定です。

いやぁ、しかし、ベンチュリーポンプシステムのアウフヘーベンを見せつけられましたので、ベンチュリーポンプも搭載しているA'社のサイン号への期待が否応なく高まってきますね〜。A社も前述したアキュラスの後継機を来年に出すらしいですし、今後、小切開化が更に進むならば、ベンチュリーポンプの時代になるのかも知れませんね。