ORAについて by B

お疲れ様です!気が付けば、今年もあと一週間を切り、思いっきり師走でございます。皆様は如何お過ごしでしょうか??

Bは今年一年を振り返ると、まぁ、色々ありましたね〜。良い年だったかどうかと言うと、正直、微妙ですね・・。言い切ってしまうなら、あまり良い年だったとは言えないかもです。

自分の一年を漢字一文字で表すならば、「悩」になるでしょうか。

まず苦「悩」したのが、スタッフがこの一年間で、円満・非円満色々ありましたが、トータル5名が退職しました。この、「スタッフの退職」というのは、所詮、小企業の社長である手術開業医にとっては、かなりテンションが下がるイベントであります・・・。理由はそれぞれですが、人使いの難しさを改めて痛感させられた一年でした。このブログでも述べたことがあるような気もしますが、院長の意識と、スタッフの意識の温度差を埋める、言い換えると、スタッフのモチベーションを如何に向上させるかというのは、社長の根本的な仕事の一つであります。Bが未熟であったということです。また、本人にはやる気があっても、そのスタッフの能力に適した仕事を与えられているかというのも重要であります。そこが上手くいってないと、業務上、様々な齟齬が生じてまいりますね。まぁ、色々勉強させていただきました。スタッフ補充は、誰でも良いというわけでもないので、慎重に進めておりますが、来年4月に新卒が加入することによって漸く回復するということになります。


次の「悩」は、手術件数ですね。Bが継承開業して以来、手術件数は年々伸び続けていたのですが、一昨年の秋に医院移転し、昨年は新医院ご祝儀もあってか、かなり手術件数が増えました。その反動か、今年は、常に昨年の同時期手術件数よりも負けており、Bはストレスを感じていたわけでございます。

もちろん、建前上、医療法人は利益を追求する会社ではないので、手術件数が多かろうが少なかろうが、来られた患者さんがハッピーになるように一生懸命治療すればよいわけです。その分、若干の税制の優遇も受けております。されど、最先端医療を提供しようとすればするほど、マシンはハイテク化し、器機の導入コストは昔に比べると桁違いになっておるにも関わらず、診療報酬(特に白内障手術)は変わらないので、実質の利益は減少していきます。そして、沢山手術をしようと思えば、沢山の人間を雇用しシステマチックに動かしていかねばなりません。人件費も増大していきます。更に追い打ちをかけるのが、医療業界には今までには無かった概念ですが、「保守料」という名目の維持コストが、ここに来て急に出現してまいりました。Bのクリニックでは、オペをしようがしまいが、そのマシンたちが医院に存在しているだけで、毎年高級車(車種は想像にお任せしますが・・・・)を1台ずつ買えるくらいのコストが発生しております。こういう状況なので、Bの趣味である釣りに例えるならば、Big Fishになってしまったからには、その巨体を維持するためにエサを食べ続けないと維持できないと言うことになるわけでございます。まぁ、分不相応にハイテクマシンを導入し続けたのはB自身でありますので、責任は一手にBにあるわけですが、手術件数が減ってくるとえもいわれぬ不安感に襲われるわけでございます。結果的には、オペ件数は、なぜかこの12月に結構入ったので、昨年より少しだけ少なくなった程度で、ほぼ同数と言っても良いレベルになったので、やや安堵している状況であります。

3つ目の「悩」は、本題にも関わりますが、ハイテクマシン導入による手術ストレスであります。正直言いまして、自分が今まで慣れ親しんだマシンを使い続けて、術式を変えずに永遠にやり続けている方が、ストレスは無いに決まっております。

昨年後半から今年にかけて、フェイコマシン(百人隊長号)、レーザーフェイコ(鏡X)、手術用顕微鏡(Proveo8)、そして後述するORAと立て続けに導入してしまい、当院手術場の環境が激変しましたので、術者としては結構ストレスでした・・・。特にフェイコマシンは設定が落ち着くまでは色々try&errorを繰り返さねばならず、明らかに破嚢率は上昇しましたね・・・。ちょっと、導入間隔が詰まりすぎていたかもしれません。この一年間、色々しんどかったですわ〜。ついてきてくれたナースを始めとするスタッフには感謝の念しかありません!

さて、本題に入ります。ORAの件でございます。

導入後、色々使ってみましたが、まだまだ軽快に使いこなしているという感じではなく、慣れていっている段階であります。

Bのクリニックでは、FLACSのマルチ症例、トーリックIOL、レーシックを始めとする屈折矯正術後のcat ope、そして不正乱視等、通常のSRK/T式での予測困難な症例に対して使用しております。

まず、使い勝手でございますが、3キロもある巨大な弁当箱のような物体を顕微鏡に装着せねばなりません。A社曰く、これはORA使用時のみに装着するわけではなく、基本、ズーっとつけておいて欲しいとのこと。付けたり外したりすると、キャリブレーションが狂い精度に不安が残るとのこと。

されど、巨大弁当箱を装着すると、明らかに術者のワーキングスペースが減ります。耳側切開ならさして問題はありませんが、上方切開で眼軸長の長い症例ではIAで12時近くの皮質を吸引する際、ハンドピースが弁当箱にカツカツと当たってしまいます。そして、術者・助手顕微鏡ともに、若干視野が狭まります。また、いきなり顕微鏡本体にプラス3kgもの負荷を与え続けるわけですから、1年、2年と使用していくと顕微鏡のモーターなどの損傷が早まる可能性は大いにあると感じてます。

IOL度数の予測に関しては、無水晶体にして、皮質をきれいに取ってから粘弾性物質を注入して眼圧を21mmHg以上に上げ、そこから予測を開始します。シューティングゲームみたいなもので、的の中に角膜頂点を入れてあげれば、ピントさえ合っていればオートで測定を開始、一瞬で予測IOL度数が出てきます。ここは、慣れたらどうということはないです。ただ、deep set eyeで水が溜まりやすい症例や、角膜頂点に混濁がある症例、不正乱視の症例などはなかなか上手くいきません。不正乱視の症例でORAを使用するのは、結論から言うと推奨はできません。

トーリックIOLの際の、軸合わせに関しては、正直微妙であります・・。ORAの推奨軸が出てくるわけですが、ここにピタッと合わせようとすると、目も動くし、眼圧も変わってくるし、IOLも意のままに回転できるわけではないので、ドツボにハマる可能性があります。ていうか、何度かドツボにハマってしまいました・・・。結局現在は、従来通りのべリオンの予測ラインとORAの予測ラインを両方表示させ、ほぼほぼ一致していれば従来通りべリオンの軸を信用し、少し変化があるようなら、べリオンの軸とORAの軸の間くらいを目安に挿入し、挿入後再測定して、そこそこの残余乱視ならOKとしております。トーリックIOLは乱視をゼロにしようと神経質になると、結構つらい思いをすることがありますので、B的には1.0D以下になればいいやくらいの気持ちで丁度じゃないかと思います。

実際の結果に関しては、RK術後cat、PTK術後cat、LASIK術後catと色々経験させていただきましたが、レーシック術後で現時点(術1週間後)で+0.75〜+1.0Dの遠視ズレを認めておりますが、PTK術後ではバッチリ狙い通りに来ましたし、RK術後に関しては、事前にBが予定していたIOL度数よりもかなりプラス方向にズレた度数をORAに指示され、半信半疑でORA推奨度数を挿入したところ、結果的にはORAが正しく元の予想でIOLを入れていれば遠視ズレを起こしておりました。この症例はORAに助けられましたね。(^^;)

というわけで、屈折矯正術後のcat opeが多いような施設は、導入しても損はないと思います。トーリックに関しては、現時点では、べリオンがあるならばそこまでメリットは感じません。そして過度な期待は禁物で、ORAがあれば全ての症例のIOL度数ズレがゼロになるわけではないということを肝に銘じ、一つの参考値と捉えるくらいで良いかと思います。

断言してしまいますと、手術時間は明らかに伸びますし、特殊症例が少ないクリニックでは正直言って、いらないです。

今後、色々な施設で使われていって、「こうやって使用すれば、もっと効率よく正確な予測が出来る」などの報告や、いずれは出てくるかと思いますが、従来通りの術前のみの予測と、術前・術中予測との比較で有意に後者が正確であるという論文などが出れば、市場が動き出すかも知れませんね。迷ってる先生方はちぃと様子を見られた方が良いかと思います。繰り返しますが、屈折矯正術後のcatが多いクリニックは買って損はないです。

白内障手術マシーンや顕微鏡とは違い、このマシンはダイレクトに患者満足度に直結してきますので、導入時のインストラクションなどは慎重の上に慎重を重ねてやっていくべきであると思います。従来手術より長い時間をかけて手術をし、結果的に屈折度数がズレていた暁には、患者の不満はダイレクトに執刀医に向かってきます。A社の各担当者は、ORAに関しては、今までのマシンとは患者直結度が全く違うことを認識して、仕事にあたってもらいたいと敢えて述べておきましょう。

本日は以上です。個人的には、今年は色々悩みが多かったので、来年はストレス少なく、楽しい1年を過ごしたいですね!!そうなると信じております!

本年も大変お世話になり有難うございました!では、皆さまも良いお年をお迎えくださいませ!