強膜切開と角膜倒乱視 by B

先週末から今週火曜日まで3泊4日で毎年恒例の沖縄に家族旅行に行ってまいりました。

いつもの定宿であるブセナテラスに泊まっておりました。もうこれで5回目の宿泊になりますが、本当にあのホテルは良いですね〜。沖縄サミットの開催地として名を馳せ、その後月日はだいぶん経過しておりますが、全く古びた感じはしません。どなたが設計・建築されたのかは存じませんが、建築デザインされた方が良かったのでしょう。

一度も行った事のない方は、是非一度訪れてみてください!サンセットの時間帯に、ホテルから東シナ海雄大な海を見ながら、プールサイドから流れるサックスの生演奏を聞いていると、どんな女の子でも落とせるような気がします!!あいにく、私は家族旅行でしか行った事がないので、実証済みではないですが・・。


金曜日午後は、エキシマレーザーを施行している施設にだいたい毎週行っております。本日、その施設で卒後3〜4年目の若い先生と話す機会があり、話していると、何とこのブログの愛読者とのこと!!

それとなく、感想を聞いていると、「眼科手術系の話は面白いが、政治系の話も多く、それがちょっと・・」とのこと。

あっそう・・、やっぱり・・。

まぁ、こちらとしては書きたい事を書いているだけなので、自ずと現在のような配分になってしまっておるわけですが、今後は意識的に眼科手術系のことも増やしていかねば・・と感じた次第でございます。

本日の屈折矯正外来に来られた患者さんですが、数年前にECCEで白内障手術をし、術前は1D未満の角膜乱視でしたが、術後-3Dからの倒乱視が発症し、レーシックで乱視矯正された方でした。

白内障術後は「ものが二重に見える・・・」と不満を訴えられ、紹介されタッチアップされたのですが、レーシック術後はバッチリで裸眼1.0出ておられました。

私ぐらいの世代が、ECCEから手術を習い始めた最後の世代ではないかと思うのですが、今思い返すと、昔は術後乱視の度数などさして気にしておらず、「そんなもんでゴチャゴチャ言うな!メガネをかけて1.0出てるんだから、問題ないでしょ!!」と言った感じでございました。

最近は、3mm以下の小切開創でのオペが当たり前になっており、白内障術後の医原性乱視の事をつい忘れがちになってしまいます。特に最近から手術を始める若い先生方は、知識としては知っていても、実際はあまり経験する事がないので、イメージしにくいかもしれませんね。

しかし、「眼球を切開すると、医原性乱視が必ず発症する」という事を頭の片隅に入れておかないと、忘れた頃に痛い目にあう事もあります!!

斯く言う、私めが、最近経験してしまいました・・・。

さすがに、最近は計画的ECCEをすることはほぼなくなりました。とは言え、強膜を6mm以上切開する局面が皆無になったわけでは勿論ございません。

私の失敗談は、1カ月ほど前のことです。短眼軸長眼かつ、太っておられるオバサマかつギンギンに緊張されていた患者さんの白内障手術でした。

滞りなくオペは進んでいたのですが、IOL(H社 imics)を挿入する際、インジェクターの感触が非常に硬かったのに、無理から挿入しようとしたのですねぇ・・。するとインジェクターの先っぽで、IOL光学部を損傷してしまいました。

「こりゃ、いかん!」ということで、IOLを切断・摘出しようと、Osher式IOLカッターを前房内に入れたのですが、浅前房かつギンギンの硝子体圧にて、IOLを切断するさいに下の刃で後嚢に穴があいてしまいました〜。

今、冷静になって思い返すと、少し穴が開いていてもうろたえずに、ヒーロンVを使ってもう少し粘っても良かったのですが、その時の判断は、

「この浅前房眼で、色々やると、泥沼化するかも・・。ここは、強角膜6mm切開で素直にIOLを摘出し、新しいものを挿入すべし!」

でした。

んで、強膜6mm切開し、摘出したわけですが、新IOLを挿入後、創口を確かめると、我ながらキレイな強角膜創を作成したせいか、全然リークもなく、無縫合で手術を終わったわけでございます。

すると、術後は見事に-2.5Dの倒乱視化を認め、患者さんは「なんか他眼に比べると(他眼は通常の小切開創で無問題にオペ終了)、見にくいやんけ!!」との反応でございました。

現在、その患者さんが来るたびに、針のムシロ状態のBでございます。最近は「目をあけていると気分が悪くなり、目をつぶっている方がマシだ。家では眼帯をしている。近所の人に訴えると、『私やったら他の所に転院するわ。』と言われた。」とのこと・・。

辛いっす・・。3カ月以上経過すれば、レーシックによるタッチアップをお勧めしようと考えてますが、そこまで信頼関係を繋ぎとめれるかが勝負でございます。他院に行かれたら、ウチの医院のことをボロカス言われるかも知れませぬ・・・。くわばらくわばら・・。

少なくとも6mm切開創を無縫合で終えずに、しっかり縫合していればここまでの倒乱視化は避けられたかも知れません。一時、「無縫合ECCE」がイケてる技術のように言われた時代もありましたが、角膜乱視に関して言うと、やるべきではありませんね・・。

と言う事で、白内障術者は強膜切開と惹起角膜乱視については常に心に銘じておかねばならぬと今さらながら思い知った次第でございます。