CRVOの抗凝固薬 by A

このブログは今やバリバリのB先生と、髪の毛が薄くなる世代のAと交代でいろいろ書いてみようとのことでしたが、ふと気がついてみると、三ヶ月以上もご無沙汰してしまいました。Aはいわゆる団塊の世代で、同級生で勤務医の方や会社勤めの方など、ぼちぼち停年ということになっています。同窓会では息子や娘の話題を通り越して、孫がどうのということにもなって来ております。そんな中で、いまだ現役(?)で手術させていただいているのは、開業しているからこそであり、ラッキーだなあとつくづく思います。

先日もある会合で、同業の先生方と同席しましたおり、大学教授の先生方にくらべ、手術開業医の先生方のほうが元気といいますか、幸せな人生を歩んでおられるように感じました。といいますのも、私よりも10才以上年上の先生方がすべて現役の術者であり、「先生はまだ若いから、これからですね!」とか、おだてられたからです。

政治の世界ではいよいよ民主党政権に終止符がうたれました。めでたしめでたしというところですが、われわれの世界では、実は、民主党政権による揺り戻しで、手術点数が増加という、よい流れもあったわけです。勤務医の疲弊に対する対策の一環で、医師の技術料をあげるということでした。ご存知のとおり、眼科では硝子体手術のブーム到来となっております。白内障手術に関しても、さがるさがるといいながら点数が維持されているのは、もちろん、この流れに乗ったからこそでしょう。

そのかわりといいますか、外来の点数は下げられており、手術なし開業は少しずつ苦しくなっております。また、薬価も改定のたびに下がりますので、業を煮やした製薬業界が、「医師の接待を禁止」という協定を結びました。これは、自分で自分の首を絞める結果ともなっているわけですが。

今後、民主党が復活する可能性は零に近いですし、自民党日本維新の会など、以前に戻るか(社会保障緊縮の小泉路線)、あるいはTPP導入による公的保険への影響など、どう動くか予想がつきません。

当然のことですが、医療や福祉を守る以前に、まず国を守らなければなりませんし、経済破綻といった事態も避けなければなりません。今は、「保険点数がどうの」といった、些細なイシューは無視して、大所高所にたった選択をすべき時が来ていると思います。

医療保険にせよ、高速道路にせよ、あるいは年金システムにせよ、日本の公的システムはよい点もたくさんあります。道路公団が欲と二人連れで道路を作り続けているからこそ、毎日の車通勤が可能となるわけですし、生活保護に優しい点では世界に冠たるものがあるでしょう。公的輸送システム(鉄道)の充実は奇跡的とも言えるほどです。

これからは、これらのインフラを利用しつつ、さらに国際的に発展させるべく、大胆なかじ取りが必要となってくることでしょう。

さて、標題の話ですが、寒い季節になって眼底出血の患者さんも大勢お見えになります。特にCRVOは予後不良で、なかなか治療困難な場合も多く、困っておられることと思います。C(B)RVOの治療といえば、光凝固、硝子体手術に加え、ワーファリンやアスピリンなどの抗凝固薬の使用が一般的でした。通りにくくなった部分で血流の再開をはかるという、理屈の通った方法であり、四半世紀にわたって標準的な治療だったのではないでしょうか。

ところが、この道の大御所たるHayreh先生が2011年に発表した論文によれば、「CRVOやhemi-CRVO、において、抗凝固薬の使用により、視力予後が悪化する」とのことだったのです。コペルニクス的転換を促す論文でした。

それ以来、静脈閉塞症に対して、漠然を抗凝固薬を投与することはやめることにいたしました。とはいえ、すでに内科等で出されている場合もとても多い訳です。内科に問い合わせた上、どうしてもということでなければ、投薬中止も考慮しなければなりません。

どっちみち予後の悪いことが多い疾患ですが、抗凝固薬により更に悪化している可能性があるとのことは、是非知っておきたいことだと思います。

CRVOに対しては抗凝固薬を使わず、PRPCを行い、場合によっては抗VEGF抗体薬を使用するとのスタンスで治療を行うことにしています。