極小切開白内障手術 by A

最近は3mmではなくて、2.5mmあるいは2.2mm幅の切開でもシングルハンドのPEAが出来ます。19Gではなく、20Gのチップを用い、スリーブもそれに相応しいのを用います。ただ、対応する眼内レンズの種類が限られますし、超音波の効率が落ちるので、全面的に極小切開に切り替えるのには勇気が要ります。

たとえば、小瞳孔、浅前房、IFISと三重苦の症例の場合、3mm切開だったらなんとも無かったものが、2.5mm切開にすると、ドキッとさされることになります。小瞳孔のままでCCCを完成し、チップを突き立てて簡単に4分割し(フェコチョップ)、さて超音波をかけるかという段になって、いくら吸っても核が中央に出てきません。吸引する力が弱いため、核を分割したのみで隙間のない状態では、核を移動させられないのです。

ということで、ややこしい症例はフェコチョップ法ではなく、まず少し掘ってから割るという操作の方が安全、確実になります。つまり、手術の時間が確実に伸びます。メーカーの方が吸引圧や流量をいくら調整しても、19Gと同じ食いつき力を再現することは出来ません。19Gに慣れたボリュームサージョンが極小切開に移行しないのには訳があるのです。

「2.5mm以下の小切開でやる」と心にきめたとすれば、器械はソブリンよりもインフィニティの方がいいですね。食いつきが悪いのはどちらも同じですが、核片の処理能力はオジルの方が格段に優れています。「神の手」A先生がこの器械にこだわるのには理由があるのです。

切開幅が2.2mmになったからといって、術直後の乱視が減るということはありませんね。むしろ、無理してIOLをねじ込むためか、翌日の乱視は多めに出るような印象すらあります。ただし、落ち着いた後は乱視の点で有利でしょうし、感染のリスクも少なくなるでしょう。

結局、私としては全面的に極小切開に切り替えるつもりはありませんが、アルコンIQ,ホヤFYなどの対応レンズを使う際は2.5mmにすることにしました(器械はソブリン)。そして、小瞳孔、チン氏帯弱い、浅前房など苦労が予想される場合は、あえて19G(3mm切開)にこだわるということにいたします。木を見て森を見ずということだけは避けなければなりませんから。