「入院は安全だ」という(間違った)神話 by B

最近、美達大和という作家の「人を殺すとはどういうことか」という本を読みました。
人を殺すとはどういうことか―長期LB級刑務所・殺人犯の告白
実際に2人を殺害して無期懲役刑に処された人の本です。社会生活時代は「ミナミの帝王」のような仕事をしていたようです。今、本人は反省しておられますが、当時遵法意識が希薄で、自分の中のルール(そのルール自体は「嘘をついてはいけない」「借りた物は返す」など至極真っ当なものです)に背くものは殺されても仕方ないと考えていたそうです。ちょっとマニアックですが、僕の大好きなマリオ・プーヅォのゴッドファーザーに出てくる殺し屋「ネリ」に似ているなと感じました。

刑期8年以上の、まさに札付きのワルばかりが集まっている長期LB級刑務所内で書かれた手記で、実際の凶悪犯達の素顔もたくさん描かれてます。個人的にはこういう書物は興味津津であっという間に読破してしまいました。

これを読んでいて、新たに知ったことは、長期刑務所内で、人を殺して本当に悪かったと思っている人間は極一部しかいないとのこと!よくあるパターンが強盗殺人で

・空き巣に入って物色中に家人が帰宅したり見つかったりして騒いだため殺した→殺害された人は気の毒だが、運が悪かった(自分、殺された人ともに)という感じしかないそうです

強盗放火殺人の場合は

・せっかく苦労して空き巣に入ったのに、盗る物がなかったので腹いせに火をつけた

というのもありました。ほとんどの殺人者は出所後も泥棒稼業に戻り、また長期刑務所にまで戻ってくる人も多くみられるそうです。泥棒のプロに作者が直接いろいろ聞いたところ、「時間効率で考えれば、普通の仕事よりも泥棒の方が、数時間の仕事で大金を得られるので得。捕まって何年か刑務所に入っても、そこでリフレッシュ(!!)出来るから何とも思わない」と言ったそうです・・・。

何か、この本を読んでから医院や自宅のセキュリティが非常に気になりだしました!!プロの泥棒にとって、狙いを定めさえすれば家宅侵入などは容易だそうですが、やっぱりALSOKやSECOMなどに加入して、侵入すると大きな音がなり数分後に誰かが確実に来るとなると、殺害するよりも逃げることを優先するでしょう。実は、今までセキュリティについて深く考えたことがありませんでしたが、お金はともかく、殺されたら一貫の終わりですものねぇ。

最近の「人権化」の流れで刑務所内もどんどん快適性がアップしているようです・・・。作者自身は「死刑廃止などとんでもないが、ごく稀に改心する人がいるので執行猶予付き死刑」を提案してました。

月曜日に施行した多焦点IOLの方は、遠見0.9(1.0)、近見0.7(1.0)で満足されてました。術翌日で-0.5Dの近視レンズが入ったのが若干気になりますが、現時点では不満ありません。

さて、本題に入ります。本日朝、日帰りで来週・再来週に両眼手術予定の患者さんから電話がかかってきました。

「家に帰って子供に言ったら、『絶対入院で手術しろ』と言われました。すみませんが大きな病院で2週間入院して受けます」

とのこと・・。入院なら当院でも可能なので

「では、一泊入院されますか?」

と言っても、

「いや、やっぱり心臓も悪いですし、子供が大きい病院の方が安心やと言うので、本当に申し訳ないですがキャンセルさせてください」

とのことでした。私は地元の市民病院でもオープンシステムで執刀も出来ますので、結局、市民病院で入院下にて手術を施行することになりましたが、何とも朝っぱらから気の優れないスタートでございました。

正直、眼科手術開業医にとって、一番の敵(?)はこの「大病院志向」「入院安全神話」でございます。

執刀医が考える手術のリスクは、「核硬度」「散瞳径」「チン氏帯の脆弱性」「前立腺肥大治療薬内服の有無」などであり、今日の10分前後の小切開手術において、内科的要因でリスクだと考えることはほとんどございません。

もちろん、手術中に心臓発作が起きたら・・と考えないことはなく、そういう準備は一応しておりますが、かなり確率は低いでしょう。気になる場合は主治医の内科Drにお伺いの手紙を書き、OKが出ればやります。

眼科手術開業医たるもの、万一何かが起これば、モロにわが身に責任が襲いかかってきますので、そういうことも考えた上で手術を勧めているわけでございます。

当方が気になる内科的要因のリスクとすれば、「易感染性(ステロイド免疫抑制剤)」「認知症などの神経疾患」などでしょうか。

実際、入院しても横に肺炎の人がいてゴッホゴホやってたりすると、自宅の方がよっぽど清潔だと思います。

もちろん、入院下での白内障手術の全てを否定しているわけではなく、環境によっては入院をお勧めする場合もあるわけですが、一般の患者さんの何割かが何の根拠もなく日帰りよりも入院の方が安全だと考えている現状を何とか覆したいと考えております。

入院絶対安全志向の方(御家族含め)が少しでも安心して受けてもらえるようなクリニックにするには、やはり「手術時の麻酔科医常駐」が必須ですかね・・。ずーっと探しているんですが、中途半端な地方都市のせいもあり、全然見つからないんです。万一麻酔科Drがこのブログをご覧になられていたら、是非ご連絡ください!!