一抹の空しさ by B

本日も城塞号のデモという事で、2.2mm、2.3mm、2.4mmと3種類のスリットナイフを使ってやってみました。

先週に比べて、だいぶん安定してきております!しかし、「2.7mm時代と比べて気分良く、楽しく手術が出来ているか?」と考えると、正直疑問符が付きます。

20Gから21Gチップ変更による核破砕力の効率の悪さは、言うほど気になりません。まだデモ1社目ですから、比較しようもないのですが、ひょっとしたら城塞号のメリットなのかもしれません。器械云々よりも、IOL挿入時のストレスが鬱陶しいですね・・。

1例、2.4mm切開時にH社のインジェクターシステムでIOL挿入を試みましたが、上手く入らずにセッティングをし直しました。A社のグニャグニャIOLは2.2mm切開でもサイドポートからカウンターを当てれば、比較的難なく挿入は出来ますが、勢い余って、グルンと前房内で回転したりする状況もままあります。まあ、プッシュ&プルなどを使って補整すれば済む話であり、それも何十秒のことなのですが、2.7mm切開時代のようにホイホイと流れていかないもどかしさがあります。

乱視用IOLの為に、2.7mm切開での自分の医原性乱視のデータをとりましたが、ほとんど問題にならない程度なので、そんなにストレスを感じてまで、「切開創を小さくせねばならないのか??」という根源的な疑問がムクムクと頭をもたげてまいりました。

バーンに関してましては、2手術日に使っただけでは何とも言えませんが、前回、かなり硬い核かつ散瞳不良例を2.4mmで施行した際、結構超音波時間が長くなったにも関わらず創はキレイでした。今、思い返すとこの時もIOL挿入時にうまく入らず、少し創を広げて再挿入しましたね・・。

フレアーチップの扱いに慣れておらず、1stチョップよりも2ndチョップの際に、今までの感覚(この程度の硬さなら、このくらい超音波をかければ、このくらい核にチップがめりこみ、核を把持出来るので、キレイに核が割れるという感覚)とのズレを感じます。具体的には、核にめり込ませるつもりなのに、その攻撃によって核が削れていたり、把持出来た思っていても、外れてしまったり・・・といった感じです。2ndチョップで戸惑っている為に核がお皿のようになってしまった症例が何例かありました。

この辺は器械のせいにするつもりはありません。自分の感覚(=慣れ)の問題だと考えております。


少し話が変わりますが、今、話題の「仕分け作業時の論点シート」がPDFで載ってるページを発見致しました。財務省官僚が作成した、はじめに結論ありきと悪評が高まっている、例のやつです。

我々、眼科医が比較的診療報酬の高い科とされ、攻撃された資料でございます。

http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/pdf/nov11-pm-shiryo/05.pdf
↑このPDFの10ページ、要するに最後のページをご覧ください。

これでは「医師給与」ではなく「収支差額」となっておりますが、一位が整形外科で約4200万円、二位が眼科で約3100万円となっております。で、グラフ下の欄に「眼科・耳鼻科は診療所の平均よりも2割以上高い収支差額(=医師給与)」と書かれております。

この収支差額が3100万円の収の部分は医業収益でしょうが、支の部分はどこまでを含んでいるものなのでしょうかね〜?それがイコールで医師の給与となっているという事は、土地・建物のコスト、検査器機などのコスト、自分以外の従業員の全コストなどを差し引いたものなのでしょうか??

会計学的に「収支差額」というのは何を指し示す指標なのか詳しい方は教えてください!!

この仕分け論点シートがそのまま方針ということになってしまえば、眼科の点数が下げられるのは避けられないかもしれないですね。

しかし、「目、足腰は年をとれば必ずおぼつか無くなる」と昔から言われておりますし、高齢化社会が進んだから整形外科、眼科の受診者数が増えたんだと思いますよ。で、整形外科・眼科関連の医療費を下げたくて下げたくて財務省は仕方がないんだと思います。

「民間は給与カット、リストラが進んでおり、医師だけ給与が一律アップでは国民の理解が得られないのではないか」というフレーズも虫唾が走りますな。都合のよい時だけ国民に媚を売っております。

高齢化かつ少子化はどんどん進んでますから、小児科・産婦人科の診療報酬を上げ、高齢者相手の整形外科・眼科の診療報酬を下げれば非常に効率よく医療費を削減できます。要するに医療費を削減したい財務省の思惑に利用されているだけです。眼科であっても、ロクに医療機器を揃えられない公立病院はたくさんあります。その事実に完全に目をつぶっておりますね。

という訳で、拗ねてるわけでもないですが、器機設備投資の最たるものである新世代白内障手術マシーンのデモも何だか空しくなってまいりました。何とか最先端の医療を提供したいと一生懸命やっていても、「リスクが少なく、勤務時間も少ないからその科に行った」だの、いかにも金満開業医、みたいなイメージを押しつけられたら、寂しくなってきますね・・・。

今回の改定で、もしあの首相が

「高度化した医療を賄って行くには、医療費を上げねばならず、これ以上下げるという選択肢はありえません。日本の国民医療費は国民がパチンコ産業に投じている金と同程度であり、先進国中ほぼ最低でありますので、国民は財務省の謀略に乗せられないで下さい!!」

と発言してくれたら、内政面では名宰相の称号を贈りたいと思います!(外交面は、ちょっとヤバいです)

まぁ、望み薄でしょうが・・・。やっぱり拗ねてます。