眼科手術開業医バッシング by A

今朝なにげなくテレビを見ていたら、大阪府知事の橋下さんが出ておられて、「民主党の政治は今のところ100点です」とおっしゃっていました。政治主導にしろ、地方分権にしろ、まだ始まったばかりで、評価するには早すぎるとのご意見のようです。

財務省にしてやられた、とか、郵政改革も逆戻りとか、いろいろなご意見もあることでしょうが、まだまだ結果が出ていません。医療改革にしても同様で、今は行政府官僚によるブリーフィングがマスコミを賑わしているだけですので、本当にどうなるのかはわからない状況です。

仕切り作業で財務省の意向として、医療費を3%程度下げるとのことです。それも、薬価を下げることにより達成すると報道されていますから、従来の厚労省の立場は無視されています。

薬価が国際的に見ても高すぎるというのはかねてから指摘されてきたことです。眼科でも抗VGF抗体など、びっくりするような値段がついています。ジェネリックへの切り替えも進んでいません。

薬価ベースで3%の削減を達成し、その他の医療費については現状維持とすれば、デフレまっただ中にしてはまだマシといえるのではないかと思います。もちろん、来年3月に蓋を開けてみなければわかりませんが・・・。

それにしても、最近の2ちゃんねるの書き込みにおける、眼科(手術)開業医バッシングは異常ですね。白内障手術を開業医が行うことにより、「白内障御殿が立つ」など、言いたい放題です。トイレの落書き=2ちゃんなど相手にせずともとは思いますが、一説によれば、2ちゃんの書き込みも当局が入念にチェックしているそうで、誤解を避ける努力も必要かと思います。

白内障)手術開業医が眼科診療所の収益を高めていることは事実です。手術を全くしない眼科と比べると、レセプトの平均点が全く異なります。結果として、眼科全体の収支平均値を上げ、財務省の餌食にされてしまっています。

「だから、開業医は手術なんかするな。手術は大きな病院に任せて、ゲートキーパー機能に専念せよ」というのが2ちゃんねるの意見の代表例です。「手術をしない眼科開業医にとって迷惑きわまりない」というわけです。

開業医でありながら、ゲートキーパー機能に専念せず、自らが本格的な治療を担当しているというのは、眼科以外でも見られます。たとえば、外科では痔疾治療専門診療所、内科では循環器や消化器の専門診療所などが白内障手術開業医と同じような存在です。しかし、白内障手術は眼科本体で占める(医療費)割合がそれらに比べて圧倒的に高い特徴があります。だからこそバッシングの対象となってしまいます。

そこで、国民の皆様に考えていただきたいのは、開業医が白内障手術を行った結果がどうなっているかということです。

まず、1)手術のほとんどが日帰りになりました。いちいち入院せずとも、近所で手軽に手術を済ませることができます。次に、2)医療費が安くなりました。入院手術に比べると、入院諸経費がかからない分、日帰りのほうが安くなります。これは、眼科医療費全体の効率化にもつながります。

また、3)手術までの待機期間が短縮されています。かって、大きな病院でしか白内障手術を行っていなかったころ、手術の待機期間は1年がざらでした。今では、開業医が競って白内障手術に参入しているので、待機期間は長くて数か月でしょう。

さらに、4)多焦点IOLや乱視矯正IOLなど、新しい方法の導入に熱心なのは、眼科の場合、大学眼科を除きますと、どちらかといえば病院勤務医よりも開業医です。証拠として、厚生労働省のHPより多焦点眼内レンズ移植術の実施施設一覧をご覧ください(このページの77番)。理由は簡単で、国公立の大きな病院の眼科では、最新鋭の手術、検査器械の導入がすごく遅れてしまっているからです。これは、病院全体の赤字が原因です。

先ほど開業医が「競って」と書きました。眼科手術開業医では競争原理が導入されています。市場原理主義者ではありませんが、競争原理が働くことにより、よりよいサービスを提供しようとの意思が働くことは疑いの余地がありません。

もし、白内障手術の点数が下げられたら、上の1)〜4)はたちどころに消失し、20年前に逆戻りするでしょう。高齢化社会まっただ中、右往左往される患者さんの姿が目に浮かびます。

財務省が考えておられるとおり、眼科、整形、耳鼻科、皮膚科などは、生命に関係しない疾患が多いですが、言い換えれば、QOL(生活の質)の向上と直結している疾患が多いということになります。人間としての尊厳を保って、幸せな生活を送るために存在する診療科です。これらを切り捨ててよいわけがありません。

勤務医:手術開業医:手術しない開業医 の対立、医師会と勤務医会の対立は、医療全体にとってマイナスにしかなりません。国難の今、医療を守るとの観点で、立場を超えた議論が必要なのではないでしょうか。