平成22年度の保険改定 by A
いよいよ決まりました。内容はこれまでの改定とは比較できないほどの大幅な変更でした。
まず、われわれにとって最大の関心事であった白内障手術は、12100点と変化無しでした。「さがる〜さがる〜」を云われ続けていたことから見ればホット一安心ですね。
しかし、他の手術、たとえば、
涙嚢鼻腔吻合術 14500→21750 *
涙小管形成術 8580→12870
下垂・筋膜移植法 9500→14250
結膜嚢形成・皮膚 6980→10470
結膜嚢形成・全部 8580→12870
内角形成 8580→12870
眼窩底骨折 8840→11490
眼窩骨折整復 13600→20400
眼窩内異物除去・表 5670→7370 *
眼窩内異物除去・深12800→19200 *
7880→10240 *
眼窩内容除去 8710→13060
眼窩内腫瘍摘出・表 4520→5880 *
同・深在性 20100→30150 *
眼窩悪性腫瘍手術 24800→37200 *
眼球内容除去 3020→3930
眼球摘出 2820→3670
斜筋手術 6610→8590
義眼台包埋 3950→5140
眼筋移動 12400→18600 *
眼球摘出 4340→5640
強角膜婁孔閉鎖 5920→7700
角膜被覆 4090→5320
角膜移植 39800→54800 *
強膜移植 12700→14470
角膜形成 2350→3060
虹彩腫瘍切除 7490→11230
毛様体腫瘍切除 11900→17850 *
トラベクロトミー 14200→21300
レクトミー 21000→25930
虹彩整復 4700→4730
毛様体光凝固 2760→3590
毛様体冷凍凝固 1660→2160
前房異物除去 6050→7870
網膜復位術 21400→32100
網膜冷凍凝固 10500→15750
硝子体切除 11000→16500
硝子体茎膜あり 24500→36750 *
硝子体茎その他 20500→30750 *
増殖体硝子体網膜症38600→51850 *
硝子体置換 4080→5300
と大多数が大幅アップしているのに比べると、実質値下げという感じもいたします。上記手術以外は廃止か点数変化なしです。点数の下がった手術はありません。
ロトミーにしろレクトミーにしろ、難易度や所用時間は白内障手術と同じようなもので、材料費、器械は逆にはるかに安いのですから、白内障手術の点数アップなしというのは、政治的決定(件数がはるかに多いから上げられなかった)以外のなにものでもありません。
なお、*をつけた項目は、保険請求する際、地方厚生局等にあらかじめ届け出が必要ですのでご注意ください。
新しい項目としては、エキシマレーザーによる治療的角膜切除(PTK)が10000点として新設されました。これも届け出が必要です。
また、注射の項目で、「硝子体内注射 580点 (G016)」が新設されました。これはもちろん、ルセンティス等の手技量のことであり、歓迎です。
検査では局所ERG(500点)および光学的眼軸長測定(150点)が新設されました。IOLマスターとA-modeとの併用が可能であれば点数増になります。
つぎに減額項目についてみると
再診料 72→69
屈折検査 74→69
矯正視力 74→69
精密眼圧 85→82
角膜曲率 89→84
となっています。
今回の改正の要点を一言で述べれば、「開業医の点数を減らして、病院の点数を増やす」ということになろうかと思いますが、われわれのような手術開業医にとりましては、結果がどうなるか(売り上げ増か減か)は微妙なところです。
ただ、立場を超えて考えれば、病院の疲弊を防ぎ、勤務医の生きがいを求めるのは当然であり、難関手術の点数が大幅にアップされましたことは、喜ばしいことと思います。
また、白内障手術の点数がキープされましたことは、従来どおりの、開業して白内障手術を行うという道が残されたことであり、これまた喜ばしい結果だったと思います。
ただ、ゲートキーパー機能に徹する開業医にとっては、売り上げの5%程度削減を余儀なくされたことになろうかと思います。
病院で手術を担当される勤務医の先生方は、この事実を決して忘れず、責任感を持って高度な眼科医療に邁進されることをお祈りいたします。
ちょっとシミュレーションをしてみますと、レセ枚数が1000クラスの外来減は月40万円くらいですから、白内障手術だけではなく、硝子体手術を月4件している施設ではとんとんということになります。
硝子体手術のみならず、上に挙げた数多くの項目の手術に積極果敢に取り組めば、売り上げ増も見込めます!しかし、そこは当局もよく判っているので、「届け出」というしばりを入れているのですね。医者はあまり信用されていません。
山本病院事件などを見ますと、それも仕方ないなあと思います。とにかく、まじめに(高度な)医療に取り組む姿勢を評価しようとの今回の改訂は合格点を与えても良いのではないでしょうか。
当局との折衝にあたられた三宅、山岸両先生を始めとした眼科医会幹部の先生方、また、眼科学会社会保険会議の先生方には、この場を借りてお礼申し上げます。