最高税率上げは国をほろぼす by A

所得税最高税率をもっと上げることにより子供手当ての財源とする、との管財務大臣の発言がありました。いよいよ、民主党の本性が現れてきました。

戦後、シャウプ税制により、過剰なまでの累進課税が行われました。1986年では所得税最高税率70%だったといいますから、地方税とあわせると80%の超過酷な税率でした。それが、現在、40%(地方税と合わせ50%)になっています。それでも、世界で4番目に過酷な最高税率です。

平成21年度の所得税掛け率表によると、課税所得が1800万円で最高税率となってしまいます。意外に低い年収で早くも最高になることがわかります。

課税所得とは実際の年収から各種控除を引いた額です。このうち、最も大きなものは給与所得者の給与所得控除ですが、その計算方法を見ますと、年収1000万円以上で、所得がその95%−170万円となっていますので、給与所得者については、(1800+170)÷0.95=2074万で最高税率に達してしまうことがわかります。

「2000万なんて、超うらやまし〜。そんなん、うちらに関係ない!」と思っておられる御仁も多いことでしょう。ネットアンケートによれば「最高税率上げに賛成」が半分を超えているそうです。

しかし、ここからが肝心なところですが、上にあげた所得税の掛け率表や給与所得控除計算表はその時々の経済情勢で変わります。最高税率課税所得額が将来もっと下げられる可能性もあります。

もっと大切なことは、(最高)税率を上げることにより、起業(新しく事業を起こすこと)が極めて困難になることです。これは、借金の元本返済は税引き後の手取り収入で行わなければならないからです。

たとえば、ここの住人の眼科医が、新たに開業する場合を考えて見ましょう。銀行から1億円を借金し、白内障手術室付き開業をしたとします。所得税地方税最高税率が80%の場合です。

開業していきなりの盛業は望めませんが、それが可能であったとして、年の売り上げが1億5000万ありました。利益はなんと6000万(!)。しかし、ここから税金を支払えば、手取りはたった1200万円。自分と家族の生活を思いっきり切り詰めたとしても、元本返済に20年近くかかるでしょう。

実際は早期に倒産という可能性が強いですので、一定以上の財産を親から譲ってもらった医師以外、開業する気にならないでしょう。

超過酷累進課税では新しい企業家が出て来れません。若い人は自営業を親から引き継ぐか、大きな会社に就職するしか方法がなくなります。これでは、社会に活気が出てくるはずもありません。

アナタの彼氏が会社でいじめられても、「もう、独立しちゃえば!」ということもできません。

アジアの他の国を見ると、もっとも少ない部類の香港では所得税最高税率が何と、18%です。2000万円の年収のある人は、1600万円が手取りとなります。先の開業医の例では、数年で借金完済となりますから、人々はこぞって起業し、資本が世の中で有効活用されます。これこそが(プロテスタンティズムの倫理と)資本主義の精神です。

香港やシンガポールで社会資本が立ち遅れているか?そんなことはありませんね。要は税金の使い方の問題です。

さて、もし、今以上に最高税率が上がり、法人税がそのままということになれば、以前のように、自営業者は個人の年収を抑え、法人に資金を残し、経費化できる出費を行うということにベクトルが動くでしょう。

リベートや裏金作りも盛んになるでしょうね。社会に今までとは違った不公平感が広がると思われます。社用族、銀座ママ復活でしょうが、今さらねえ。

すでに何年も前から日本人の富裕層の海外逃避が始まっています。香港やシンガポールは受け入れ歓迎です。村○ファンドの主催者もいつの間にか日本には居られません。

経済活性化のためには、中国系の豊富な資金を入れる算段をすべきなのに、全く逆の方向を向いています。今話題のハブ空港(の敗退)と同様、日本がアジアの劣等国になってしまう日も近いのではないでしょうか。

ところで、税率上げの口実は云うまでも無く国家の債務超過です。国と地方を合わせて1000兆円越えが近いとのことですから、国民の貯金の合計1400兆円に迫りつつあります(エコノミスト:2月23日号)。

日本国債は国内での消費が90%以上であり、これが国債安全神話につながっています。しかし、これとて、貯金があったればの話です。

年50兆の債務超過を続けると、あと8年でドボンです。

貯金が底を突けば国がお札を刷らざるを得ませんので、円が暴落します。その気配が感じられたとたんに、海外から売りオプションを浴びせられますので、国債価格の暴落はもっと早いはずです。

現状ではそれが避けられる可能性はほぼなくなっております。所得税にせよ消費税にせよ、もはや手遅れの感があります。