不定愁訴 by A

B先生の記事に触発されて、不定愁訴について書いてみたいと思いました。

今日も、他の眼科病院で白内障手術を受けられた患者さんが、「どうしてもおかしいので、診てください」とやってこられました。毎日のようにこんな患者さんが来られます。

現在、眼科施設で治療中の方が、他の施設の受診を行いますと、セカンドオピニオンということになって、保険が使えないのが原則です。当院ではまずそのことを説明いたします。ただし、患者さんが自主的に治療を中止され、転院されるという選択であれば話は別で、保険診療が継続できます。ということで、セカンドオピニオン外来を設けてはいるものの、大抵、保健診療ということになってしまいます。

きょうお越しいただいた患者さんも、「もう、こちらでかかりたい」とのことで、保健診療ということになりました。

両眼の白内障手術を受けられたのが今年の2月頃で、直後より眼痛、充血があり、困っているとのことでした。手術を受けた施設では納得のいく説明がなかったので、別の医院で診察を受けたところ、「全く問題なし」との結論でした。当院が3番目の施設ということになります。

視力は両眼とも(1.0)あり、裸眼でもほぼ同様、屈折値はほぼ正視、手術は耳側角膜切開で、IOL正常、瞳孔の形、動きも正常で、手術に関しては全く問題なしと思われました。しかし、それで終わってしまっては、患者さんのご納得が得られません。よくよく観察いたしますと、軽い結膜下出血があります。どうやら、術後、結膜下出血を何度か繰り返したようです。

フルオで染めますと、SPKはありませんが、BUTが短く、また、軽い結膜弛緩を認めました。

「手術してから眼は充血するし、痛くてたまらない」との訴えは、結膜下出血とドライアイによるものと思われました。

手術は耳側角膜切開ですので、直接結膜を触った訳ではありません。ドライアイや結膜弛緩は多分、手術の前からあったものと想像されます。ただ、多くの患者さんは、手術の印象が悪いと、どうしても手術と関連付けて考えてしまう傾向があります。

「手術の時、目を押さえられて痛かった」「どうなるかと思った」とおっしゃいました。手術は全く問題なく終了していたものの、患者さんの不安感はとても大きかったようです。

また、術前後の頻回点眼がドライアイを悪化させます。今回の症例では、ドライアイの悪化が結膜下出血に繋がったと思われます。

ということで、手術は全く問題なく成功していること、もともとあったドライアイがちょっと悪化しただけのこと、点眼でもプラグでも手術(結膜切除)でもいくらでも治療方法があること、このままでも治る可能性が高いことを説明いたしましたところ、ご納得いただけたようでした。

医師や看護師の何気ない一言引き金となり、不定愁訴を引き起こすことが多いのですが、また、理学的な理由が隠れていることも多いです。

白内障手術に関連する不定愁訴の原因としては、ドライアイの他、屈折値の不適合、過度の屈折矯正、不顕正斜視、弱視、などが思いつきます。医原性乱視ももちろんその一つですが、B先生の症例は、それよりもドライアイのほうが大きかったことを教えてくれました。