今年の抱負 by A

B先生、あけましておめでとうございます。手術学会でお会いできるのを楽しみにしています!

先生の運勢が「八方塞がり」とはとても思えませんです。毎年毎年右肩上がりに手術が増え、新しい器械にもご熱心で、また、学会活動にも取り組むとは、まことに手術開業医の鏡です。これからもどんどん忙しくなるでしょうから、あまり無理をされないようにしてくださいね。

と言いますのも、昨年、私の地域で開業されたばかりの若い先生が、脳出血で倒れるという悲劇がありました。開業したとたんに手術患者が殺到するという、幸運なスタートだっただけに、まことに残念なことです。私の知る限り、全国的に見ると、眼科手術開業医の志半ばでの急逝というのは、珍しいことではありません。

正月早々縁起でもないと思われるでしょうが、本当のことです。やっぱり、手術患者を独りで抱えるということのストレスは思っている以上に大きいのでしょう。

そこで、今年の抱負といたしまして、やや後ろ向きのきらいがありますが、「決してストレスをかかえこまないこと」といたしたいと存じます。その方策をちょっと考えてみました。

ストレスと言えば、肉体的よりも精神的なもののほうがダメージが大きいです。むつかしい症例に取り組んで肉体的に疲弊したとしても、術後に患者さんから「ありがというございました」と言われると、疲れが吹っ飛ぶだけではなく、ここちよい気分をもたらす体内ホルモンが分泌されます。

逆に、簡単な症例を完璧に終えた後、「見えにくい」「どうなっている?」と言われた場合のストレスは本当に嫌になりますね。

多焦点IOLではよくそのような例を経験いたします。IOLの性質上、グレア、ハロが避けられないことや、ちょっとした残存屈折異常が裸眼視力に大きく影響することを十分に説明していても、ご納得いただけない例も多々あります。

遠くも近くも見えるという患者さんの期待値と実際の見え方の落差が大きければ当然、失望も大きくなります。これが、手術の失敗ならまだ分かりますが、IOL自身の性質や、完全には避けられない屈折誤差が原因、つまり、術者には責任がない訳ですから、担当医のストレスは並大抵ではありません。

やはり、多焦点IOLは、今後、本当に厳選した患者さんのみに行うようにしたいと思っています。ストレス解消の秘訣、その1は「多焦点はほどほどに」ということです。

手術の数があまりにも多いと、当然ストレスも大きくなります。また、予定時間を大きく超過するようなことは、たびたびあってはいけません。手術は予定通りに行くことのほうが少ないと思っておいた方がよいでしょう。なにがあってもあわてずさわがず、結果的には予定時間内に終了、というのが理想です。

ストレス解消の秘訣、その2は「手術を詰め込まないこと」。

開業医のストレスは手術だけではありません。診察の中にこそ潜んでいます。患者さんに感謝されると余命アップ、罵倒されるとその逆になりますし、予期しない経過、たとえば眼内炎発症などは、大きなストレスになってしまいます。

しかしたとえば、術後に多少の炎症が出たり、眼圧が上がったり、創のリーク、角膜浮腫などなど、当然起こりますし、そのつどストレスを感じていては体が持ちません。ストレス解消の秘訣、その3はしたがって「鈍感力」ということになるでしょう。その点では、年齢が上がれば上がるほど有利になります。

あたらしいもの、手技や器械、を取り入れるのもストレスかもしれません。しかし、考えようによっては楽しみでもあり、不幸と幸福が隣り合わせ、結局は気の持ち方次第とも言えましょう。

今年はまだフェムトキャタラクトは経験できないと思いますが、新しい硝子体手術器械がいくつか出てきそうです。5000回転のカッターがどんなものか、楽しみにしています。