和をもって尊としとなすな by A

福島第一原発の事故は人災である」と言い続けている人がいます。前福島県知事の佐藤栄佐久さんです。佐藤さんが最近日本外国特派員協会で講演されたビデオがありますのでご覧ください。

佐藤さんは本当に福島県民そして日本国民のことを一義に考え、行動して来た愛国者です。そのことは、原発事故の前に書かれた著書「知事抹殺」(平凡社刊)を読めば自ずと明らかでしょう。そんな彼は2006年9月、汚職事件に連座して逮捕されました。同じ時期に和歌山県知事、および宮崎県知事も逮捕されています。「地方政治は談合だらけだなあ」と思われた方も多かったことでしょう。ちなみに、その後、宮崎では東さんが知事になりましたね。

私も、「田舎の政治はなんでもありやなあ」とか思った記憶があります。しかし、今回の原発事故という衝撃、そして、それを予見したかのような佐藤さんの著書を読んで、そんな認識は消し飛びました。国策捜査のにおいがぷんぷんいたします。

事故が起こってしまった今になって、「原子力安全保安院経済産業省からはずれるべし」とか、「東電および政府は情報をちゃんと出せ」とか、いろいろな意見が出されています。一時TVでよく出ていた、保安院の西山英彦報道官はれっきとした経産省の官僚です(ウィキペディアによる)。東電の現社長清水氏は慶応の経済出身。会長は東大経済卒。原子力を扱っているにもかかわらず、技術系の人はトップにはなれません。

佐藤栄佐久氏がなぜ当局に敵視され、国策捜査で抹殺されたのでしょうか。日本の原子力政策に異議を唱えたからと想像して間違いないでしょう。

原子力は熱効率が非常に良いので、「事故さえ起こさなければ」地球環境に優しく、資源の乏しい我が国にとっては望ましい発電法です。しかし、今回の事故でいみじくも露呈したように、使用済み燃料の扱いがとても大変ということになります。福島第一原発に使用済み燃料が大量に保管してあったことが、今回の事故でも問題となっていますが、長期間にわたって原子炉を動かし続けている限り、使用済み燃料がたまってくるのは仕方のないことです。それをどうするか、安全に処理する方法は未だ見つかっていません。高速増殖炉が成功すれば、エネルギー革命ともなりうる訳ですが、それまでは、なんとかごまかしごまかし汚物のたらいまわしになってしまいます。

佐藤さんは福島県民を守るため、東電の事故隠しを許さず、原子力安全保安院にもいちゃもんをつけ、当時の東電の会長以下数名が辞職するという事態を招きました。

今回の事故は、佐藤氏を抹殺した日本的「和をもって尊としとなす」システムが、いかに危険かということを証明したようなものです。もし、中央政府が佐藤氏の「異論」に耳を傾けておれば、今回の震災でもこれほどの原発事故にはなっていなかったのではないでしょうか。