OKULIXの有用性 by B

僕が前から期待をしていた野田佳彦氏が、総理の座につきました。

久々の保守派総理大臣になりますが、左派の多い民主党内の「党内融和」を優先させるということは、そっちの方面では思い切った事を実行(例えば村山談話の破棄、靖国参拝)することは出来ないでしょうね。何と言っても幹事長が左派のドンである輿石氏ですからねぇ。

まぁ、今回は、ルーピー以上の史上最低総理大臣の呼び声が日増しに高まっている管政権の尻拭いに翻弄されるでしょうし、そっちに気をまわしている暇はないと割り切っているかもしれませんね。それはそれで賢明な選択とも言えましょう。取りあえず、震災後の諸問題をテキパキと片付けてしまわねば、憲法改正や外交・軍事に関することが議論の俎上にのせてもらえません。

野田氏自身が公言しておりますので、ほぼ確実に、詐欺マニフェストによって獲得した政権を手放しはせず、来年まで解散総選挙はありません。その間に自民党は、総裁を変え、戦闘態勢を整えねばなりませんね。次期総裁は安倍晋三氏しか考えられません。

政界再編は現在の小選挙区制では、皆、怖気づいてなかなかきっかけもつかめません。私が政界再編の起爆剤として、密かに期待しているのが幸福の科学大川隆法氏です。大川氏自身は、存外、ええ事を言っておりますので、幸福実現党の夢をあきらめ、黒子にまわって、保守派新政党に資金援助をし、橋下氏くらい行動力及び発信力のある政治家が党首になれば、おもしろいと思いますが如何でしょう。

さて、本題に入ります。OKULIXに関しては過去のブログでも触れております。OKULIXについて by B - 眼科手術開業医の戯言

OKULIXは光線追跡法を用いた新しい眼内レンズ度数計算ソフトでございます。

光線追跡法の詳細な説明は、なんど論文を読んでも良く理解できないのですが、要するに、角膜前面及び後面、IOL前後面での光線の変化が把握できるため、(理論上は)より正確なIOL度数計算が把握できるとのことです。裏返せば、IOLの前後面の曲率半径や厚みなどの情報が必要です。

ちなみに、SRK/T式は、角膜、IOLを全く厚みのないレンズとして計算しておりますし、術後予想前房深度は角膜屈折力と眼軸長から計算しているだけなので、正確な角膜屈折力の測定が困難な角膜形状異常眼や、LASIK術後のような異常な角膜形状の眼では、術後予想前房深度が大きく狂い易く、IOL度数計算精度が大幅に低下してしまうわけでございます。

OKULIXでは、TMSで得られた6mm以内の角膜前面の経線から、円錐曲線で近似された角膜中心の前面曲率半径を用いますが、まず、この「6mm」という所が曲者であります。理由は後述します。

角膜後面は、TMS-4では実測出来ないので、角膜厚を500μmと仮定し計算するとのこと。TMS-5や、CASIA(前眼部OCT)では、角膜後面曲率も実測出来ますが、「実測値を使用した方が、現時点ではIOL度数計算の正確度が落ちる」と、TOMEY営業の方からの、理論的に考えれば全く納得のいかない説明を聞いたので使用しませんでした・・。

当院は勿論、通常はSRK/T式で度数計算を行っておりますが、迷った時にHaigis式も使えるように、IOLマスターを測る際にルーティンで前房深度の測定も行っているので、今回、OKULIX、SRK/T式に加え、Haigis式とも比較をしてみました。

因みにHaigis式は、今となってはLASIK術後用のHaigis-L式の方が有名ですが、ドイツのHaigis先生が作成したIOL度数計算式で、IOLマスターには標準搭載されております。前房深度の実測値を用いるのが特徴で、SRK/T式の弱点を克服しております。Haigis式では、SRK/T式のA定数にあたる「a0、a1、a2」という定数が必要となりますが、これはA定数と同じく、IOLマスターユーザー用のHPにて公表されております。→http://www.augenklinik.uni-wuerzburg.de/ulib/c1.htm

使用IOLは当院採用IOLのうち、OKULIXに必要な眼内レンズ情報を提供しているのがH社のiMicsのみだったので、全例iMicsです。

【対象】本年2〜3月にかけて、OKULIXでIOLパワー計算を行い、術後3カ月以上follow出来たiMics使用例、32例46眼。眼軸長は21.37〜26.04、平均23.48mm±1.08mmでした。OKULIXの正確さを見たかったので、オーソドックスな眼軸長に限っております。

【方法】各例の使用IOL度数に対し、OKULIX、SRK/T、Haigisの術3カ月後の屈折誤差を比較した。SRK/T式は当院のパーソナルA定数(118.6)を用い、Haigis式にはweb上の定数を使用した。術3カ月後の屈折値はレフ値ではなく実測値の等価球面度数で、術前の各式の狙い度数との差を屈折誤差とし、その絶対値を比較した。

【結果】術3カ月後の各式の屈折誤差(絶対値)は、
・OKULIX 0.47±0.38
・SRK/T  0.27±0.23
・Haigis 0.42±0.50

となりました。自分の印象では、「OKULIXはあまり当てにならんな〜」と思っていたのですが、実際にデータをとってみると存外そうでもなかったです。

Fisherの最小有意差法、Bonferroni、Sceheffe、
Tukeyの各方法で有意差検定もしてみましたが、最も当てにならないと言われている、Fisherの最小有意差法で、OKULIXはSRK/T式より有意に精度が悪いという結果が出ました〜。(P値:0.0215)

Haigis式とSRK/T式との間には有意差なしです。

一応、眼軸長別や、CIA(波面センサーで測定した角膜不正乱視指数。この値が0.6以上だと不正乱視と認定出来)を0.3以下と0.3以上に分けたりして、有意差検定も行ってみましたが、基本的には同様の結果。つまりSRK/T式がOKULIXより有意に良いという結果でございました。

前評判とは裏腹に、むしろ、通常使用しているSRK/T式の素晴らしさが際立つ結果となってしまいました・・・。正直、何の面白味もない結果でございますので、全国学会などで発表する気はございません・・・。

Bが個人的に思う、OKULIXの敗因は、

・検査員のTMS測定の習熟不足・・・TMSにはコーンがあり、これが非常に測定しづらく、不評でありました。LASIK術前の若者ならともかく、瞼裂の狭い、もしくは瞬目の多い、おじいちゃんやおばあちゃんの目を測定する際には、こちらで開瞼してあげなければなりませんが、そうすると、自分の指などがコーンにあたりそうで邪魔になります。一応、ゴム製の開瞼器なども用意してくれたのですが、それを使用してもたいして変わりませんでした。

・直径6mm範囲の正確な角膜曲率の測定は存外困難・・・すなわち、コンプライスの悪い、もしくは物理的に瞼裂が狭いご高齢者の場合、よっぽどしっかりと目を開けないと、瞼がかかったり睫毛のラインがかかったりすることがよくあります。また、測定に時間がかかってしまうと、涙液の状態が不安定になり、正確な角膜曲率が測定できていない可能性が高まります。

・信頼度が不明・・・これが一番の問題点かと愚考致しますが、オートレフやIOLマスターの眼軸長測定でもついている「信頼度」が全く不明の為、しっかりとキレイに撮影出来ているのか、涙液の状態が不安定で信頼性の低いデータなのかがわかりません。また、瞼が6mm径に少しかかっていても、一応計算は出来ますが、これも信頼できるデータかどうかも不明であります。

という訳で、B的には、OKULIXというIOL度数計算ソフト自体は良いのかもしれませんが、角膜6mm径の屈折力を測定する器械が、まだまだ大衆受けするようには出来ていないように感じました。IOLマスターや通常のオートレフケラでは、3mmくらいの屈折力を測定するだけなので、ご高齢者でも苦なく測定できますが、6mmはキツイです。これが一瞬で苦なく測定できるマシンが登場すれば、また変わった結果になる可能性もあると思います。

要するに欲しいのは角膜中心の屈折力で、その値を得るために6mmもはかっているのは、無駄と言えば無駄でございます。ビシっと瞬時に角膜中心を認識し測定する器械こそ、OKULIXには相応しいといえましょう。

また、いみじくもTOMEYの方が述べた、「実測値を使用した方が、現時点ではIOL度数計算の正確度が落ちる」との言葉が象徴するように、変に信頼度の低い実測値を使用するよりは、経験式に代入して計算した結果の方が精度が高いという事になります。

通常の白内障手術に関しては、まだしばらくは、IOLマスターを始めとする光干渉式非接触式眼軸長測定装置+SRK/T式の組み合わせが最も信頼度が高いという時代が続きそうですね。

当院が普段使用しているサンコンタクトレンズ社製の角膜形状解析装置は、後面などは測れませんが、前面に関しては非常に撮影しやすいマシンなので、TMSではなく、こっちにOKULIXを搭載した方が、より良い結果が出るような気もします。まぁ、慣れの問題かも知れませんが。

今回はLASIK術後眼などの症例がなかったので、わかりませんが、学会でのデータを見る限りでは、LASIK術後などでは、OKULIXの方が信頼度が高そうなので、現時点ではそのような角膜形状異常眼で実力を発揮するという認識でございます。

以上でございます。