眼科でも垣間見える地方医療の崩壊 by B

まずは、この話からです〜。

橋下徹氏圧勝】
いやはや、全国が注目していた、大阪府知事大阪市長W選挙ですが、維新の会の圧勝でございましたね〜。

マスメディアは、どちらかというと橋下氏に否定的であり、「独裁」発言を殊更に取り上げておりましたので、若干心配しておりましたが、結果は完勝でございました。大阪府民および、大阪市民の賢明な判断に敬意を表します。

しかし、雑誌メディアは、橋下氏の出自を暴いておりました(お父上がヤクザ、従兄弟が殺人犯、被差別部落出身)が、2ちゃんねるなどなら、ともかく、こんなことアリなんですかね〜。

個人的には、そういう環境出身でありながら、大阪では№1進学校である北野高校に進み、ラグビー部で花園に出場し、大学も早稲田に行って弁護士になるという、ガッツとハングリー精神に満ち満ちた経歴に魅力を感じました。そのような方も、結構おられたのではないでしょうか??というわけで、存外、ネガティブキャンペーンになっていなかったのかも知れませんね。

日本国民は、前回の衆議院選挙で、民主党の口から出まかせの詐欺マニフェストに、ものの見事に引っかかってしまいましたが、橋下氏は、決して大衆に迎合するようなことばかりを言って当選したわけではございません。現在、既得権益を享受している集団からは蛇蝎のように嫌われておりますが、彼なら改革を成し遂げてくれるであろうと大きな期待をしております!

新聞では、「既存政党に不信感を抱く無党派層が支持をした」と論評されておりますが、まさに的確な指摘だと思います。

国民は、何も変革出来ない既存政党の政治家たちに大いなる不満を抱いております。自民党民主党も、党内に様々な思想の政治家が混在しており、党内の意思統一だけでも大変な時間と労力がかかっております。マスコミおよび、国民たちからひどく評判が悪かった、「派閥」が事実上、機能していないことも一因かもしれませんね。「親分」がいて、縦に一本筋が通っている組織なら意思統一に時間などかかりません。皆、好き勝手なことを言っておれば、いつまでたっても決まりませんわな〜。

小沢一郎氏の「権力は数の力」「権力を握るためには金も必要」という政治思想は、そういう意味では、至極正しい路線ともいえますね。民主党政権というお化け政権を作ってしまい、結局、自らが辣腕を振えなかった小沢氏自身が、現在の政治状況を一番悔しく思っているかも知れませんね。まぁ、そのために思想転向して左翼に魂を売ったプロセスが悪いので、自業自得だとBは思ってしまいますが。)

やはり、熾烈な権力闘争を勝ち抜き権力を手にしたものが、辣腕をふるうという構図でないと、物事はすすみませぬ。首相も公選制がいいような気がしてきましたね。政党政治の限界を感じます。とはいえ、あの極左管直人が権力闘争を勝ち抜き、総理大臣の座に数年居座り続け、好き勝手やってたら・・・と考えるとゾッとしますので、国民からのリコール権もしっかり担保してもらいたいところですが。

【地方の医療崩壊
派閥政治の崩壊により、現在の政界(国政)が混乱を来しているというのであれば、我々の医者の世界も同様です。

大学医局制度があり、教授を頂点とする縦社会が形成されていたからこそ、地方病院などにも医師を派遣することができ、日本の均質な医療が保たれておりました。地方の医療レベルの低下は、まさに国策の誤りと言えましょうし、国民全体の「権力に対する嫌悪感」が、この誤りに向かわせたともいえます。

マスコミでは眼科はマイナーで、命に関わるわけではないので報道されませんが、眼科的にも医療崩壊は進んでおります。そういえば、まさに最近の外来で、地方の医療崩壊を示す患者さんが来られました。

60歳代女性。見えにくいので、眼鏡屋さんに行ったところ、「眼科に行きなさい」と言われ、近隣の公立病院を受診されました。

その女性の居住地は、Bのクリニックからは車で1時間半ほどでしょうか。正直言って、ど田舎でございます。

その公立病院は数年前までは常勤医がおられましたが、「新・臨床研修制度」によって、大学病院の医局員が減少し、その病院からは眼科医は引き揚げられ、現在は週に数回、非常勤でバイト(大学院生か??)が診療を行っております。一応、手術も大学から先生が来て、たまにやっているそうです。

ここはDrの意識の問題ではありますが、常勤で勤務しているのと、非常勤でバイト気分で診療を行っているのとでは、全然責任感が違いますよね。

その女性は両眼とも0.2〜0.3(矯正不能)。最初の先生は、「緑内障があるから、緑内障専門の先生が今度来られるときに見てもらってください」と言って、別の曜日に再来院を促し、別の曜日に行くと、その先生は「これは白内障もあるし、手術をした方が・・、いや、でも緑内障もあるし、手術をしても思ったより視力が出ないかも・・」と、煮え切らない説明を受けて、「数か月後に再診」を指示されたそうです。

で、一緒について行っていた娘さんがブチ切れて、本日、当院を受診されたという次第でございます。

やはり、バイトの先生は、その患者さんの責任を最後まで負えないので、「白内障手術をしても、緑内障のせいで、思ったより視力が出なかった・・」という事象が起きるのを何とか回避したいのでしょう。また、最初に見た先生も、おそらく経験が不足している若い先生だと推察しますが、「緑内障性視野異常を認めれば、緑内障専門Drに任せる」というのも、何とも覇気のない先生ですね〜。セクション化された大学病院しかしらない先生なのかも知れません。

まぁ、白内障術者として言わせてもらうと、緑内障性視野欠損があっても、中心視野さえあれば、「白内障手術をしても視力が出ない!」というようなことは、まずないと思いますが・・。逆に言うと、緑内障で視野がかけているのに、かつ水晶体が濁っていれば二重苦とも言えますので、さっさと白内障手術をしてあげた方が良いと考えております。矯正視力が0.2〜0.3ですからねぇ。

というわけで、早速、白内障手術を予定させて頂きました。

当院としては、手術件数増加に繋がり、有難いと言えば有難い話なのですが、その患者さんにして見れば、近所の公立病院にしっかりとした常勤医が居て、白内障手術及び、緑内障のfollowをしてくだされば、何も遠方まで来なくて良いわけでございます。また、その患者さんは、たまたま娘さんがおられたご縁で当院を受診してくださいましたが、お子様と密に連絡を取られていないご家庭などの場合は、延々とバイトの先生にfollowされ、治るものも治らぬまま、月日が経過している可能性もあります。

噂によると、その公立病院は、月に1〜2回手術を行いますが、手術の執刀医は手術のためだけに来られるそうで、これも「何だかなぁ」と思いますね・・・。会ったことも見たこともない患者さんの手術だけをするとなると、後でトラブルになっても面と向かって文句を言われることもないわけですから、そんな事はないと思いますが、ややいい加減な手術になってしまう可能性があるとも言えましょう。

また、その先生に手術を依頼する形になる、若いバイトの先生方は、「こんな症例に手術を勧めやがってっ!!」という執刀医の先生の怒りも避けたいところですので、事なかれ主義で行けば、少しでもややこしそうと感じた症例は「様子見で時を稼ぐ」という心理になりがちなのかもしれません。

これは、地方病院のバイトの外来担当先生や手術担当先生を責めているわけではなく、システムが悪いですねぇ。せめて手術執刀医と外来担当医が同じDrじゃないと・・・。

病院経営的に考えても、そのような中途半端な状態で眼科を存続させるよりも、医療人材派遣の会社などを通して、眼科常勤医を募集した方が地域の為になると思います。バイトでいくら外来担当医表を埋めたとしても、患者さんの幸福にはつながらないです。まぁ、その常勤医がなかなか見つからないので苦労されているのでしょうが・・。

Bも、医局勤務医時代は、いわゆる田舎の基幹病院に数年勤務しておりました。「そこに行け!」と言われた時は、一瞬、「えっ!?」と思いましたが、「住めば都」で食事も美味しいし、「長くても3年」とわかっておりましたので、当然の義務と思って勤務しておりました。ただ、Bの出身医局も同じ窮状に喘いでおり、かつては常勤医を派遣していたのに、今は大学院生のバイトで回している地方病院が幾つかあります。こういう時に、不利を蒙るのは、田舎の方ですよね・・・。

この「地方の医師不足問題」に対し、医師数を増やせば解決するというのは、妄想でございます。子供の高学歴を欲する奥様からの「教育問題」などが絡んでくると、教育サービスが充実している都会に住みたくなるのは、仕方がない面もございますので、継続してそこに居続けられるわけではございません。前もこの話は書いたような気がしますね・・・。

「地方勤務医の給与をドカーンと上げる」というのは、悪くないと思います。給与を公表すると住民から白い目で見られる可能性はございますが、「noblesse oblige:ノブレスオブリージュ」の思想で、であるからこそ、一生懸命に頑張らねば示しがつかないということにもなります。月収300万円なら、如何でしょう?

という訳で、そろそろ締めに入りますが、地方公立病院勤務医の待遇改善を含めた医療費の増額が必要でありますし、財源を確保するためには消費税増加も必要であります。しかし、これ以上の重税国家は御免蒙りたいので、無駄を省く行政改革は必要でしょうし、税金を上げるだけでは、さらに国民の財布は縮こまりますので、皆がお金を使い(特にお金持ちが)、お金がグルグル回っている状態を作り出せる施策も必要でしょう。

早く、日本を目覚めさせるリーダーが登場し、強力なチームでガンガンと改革を行わないと、本当に日本がダメになってしまいそうです・・。そのリーダーが橋下氏かどうかは、まだ不明ですが、可能性はゼロではないと思います。