まだまだ木鶏足りえず・・・ by B

Bが占い好きであることは、このブログの長年の読者の方はご存知かと思います。

今年の運勢も当然占ってもらいましたが、悪くないそうです。ただ、Bは非常に闘争心が旺盛な所があるので、そこを上手に抑えて生きていけ、後は親孝行をすべしということを特に注意されました。

親孝行に関しては、現在も親父と冷戦の真っ最中でございます。

とは言え、まぁ、こうやって医院に戻ってきて跡を継ぎ、なんやかんや言いながら近くに住んで、孫の顔もしょっちゅう見せておりますし、儒教的な親孝行とは言えないかも知れませんが、現在の世相を鑑みると、親孝行をしている方ではないかと自負しております。

「闘争心」に関しては、Bは旺盛な方だと思います・・・。ここだけの話、Bに代が変わる前に、当院に非常勤で勤務していたDrが「ここには勝てる」と思ったのか、すぐ近所で開業しましたが、「絶対にいつか潰したる」という思いは片時も忘れておりませんし、「協調」よりは「競争」を好むところがあるかも知れません。

「闘争心」と言えば、何だか格好よく聞こえますが、「イラチ(関西弁:すぐにイライラする人)」、「怒りっぽい」とも言えるかも知れませんねぇ。

嫁はんに言わせると、普通の人とは、少し違う所にツボがあるそうで、「何でここで怒るの?」という所で、えらい不機嫌になっていたり、「ここは怒らなあかんやろ」という所で、結構ヘラヘラしてるそうです・・・。

診療中にイラっとくることも、たまにあります。

最近のBのイラツボ(勝手に今作った言葉です・・)は、何と言っても「ガムをくちゃくちゃ噛みながら話す人」ですねぇ。

先日の診療中にイラっとしてしまった一例を挙げます。

当院で手術を受けて頂いた、80歳代のGrade4白内障の患者さんがおられました。その患者さんは普通の寡黙なご老人なのですが、付き添いで来られている息子さんが、神経質かつ完璧主義者っぽい方でございました。そしてガム愛好家のようで、ガムを常に嗜んでおられます・・。

息子さんは手術前から、「IOLの材質は?」などと逐一詳細に聞いてこられ、術後狙い度数に関して説明していたときも、「近くが見えにくくなるのは困る!」だの「遠くもメガネなしである程度見えるようにしてくれなくては困る!」、「今までメガネなしでやってきたのだから、白内障手術後もメガネなしで生活出来るんでしょ?」だの色々言ってこられました。患者さんご本人は黙っておられます。

そのくらいは良くあることですので、

B「今、かなり強い白内障があり、かなり見えにくい状態になっておられます。近くが見えにくいといっても、それは今より見えにくいわけではなく、今に比べればかなりレベルの高い次元の話で、遠方にピントを合わせた場合の見え方と同じ見え方を要求するなら、メガネをかければ良いという話ですよ〜」

と優しく説明しておりました。結局、どちらもある程度見えるようにということで、-1D狙いでオペをすることにいたしました。因みに術前視力は両眼とも矯正で(0.2)程度でした。

で、まず片眼の手術が無事問題なく終了した翌日、視力は裸眼0.4、矯正(1.0)でした。核が硬かったので少し角膜の腫れはありましたが、炎症も軽微で術後はバッチリの状態でございました。

B「手術後の状態はバッチリですよ〜。良く見えるようになって良かったですね〜。」

患者さん「・・・」

息子さん(with ガム)「どうして裸眼視力が0.4しか見えてないのでしょうか??」

B「かなり硬い白内障でしたし、術翌日ですから、もっと見やすくなりますよ。ご心配いりませんよ。」

まぁ、-1D狙いで術翌日ですし、術前の視力を考えれば、もっと喜んで頂けるかと思いましたが、0.4という数字が少し気にくわなかったようでございます。ていうか、手術を受けた本人が言ってるわけではなく、付き添いの方が言っているのですが・・。ここで、大人気のないBは少しムッとしてしまったのが、相手に気付かれたかもしれません・・。

で、数日後のもう片眼も無事に終了し、翌日裸眼0.7、矯正(1.0)でございました。

B「これで両方とも問題なく終わりましたよ。良く見えるようになって良かったですね〜」

患者さん「・・・。有難うございました。」

息子さん(with ガム)「右と左は同じ度数のレンズを入れてるのですか?」

B「はい。そうですよ。(本当に左右とも同じ度数のIOLを挿入しておりました。眼軸長の差で違う度数のIOLを入れていれば、更に説明がややこしくなっていたので、Bはちょっと嬉しかったです)」

息子さん(with ガム)「では、なぜ、視力が違うのでしょうか?素人考えかも知れませんが、同じ度数のレンズを入れれば、同じ視力になるはずではないですか?」

B「いや、元々の乱視もありますし、そういうわけではないですよ。いずれにせよ術翌日ですし、個人差がありますから、もう少し様子を見てくださいね。翌日がそんなに視力の数字に囚われなくても良いんじゃないでしょうか?」←この時点で修行不足のBは、若干声が大きくなっていたかも・・・冷静さを失っていたかも・・

息子さん(with ガム)「いや、しかし、0.4と0.7とだいぶ差がありますよね。先にやった方はどうしてそんなに見えにくいのですか?」

B「まぁ、最初にやった方が核が硬かったですからねぇ。今日測定したら、もっと視力が出てると思いますよ。(注:Bのクリニックでは手術日の翌日に両眼視力測定していると検査が混んで回らなくなるので、術翌日は術眼のみしか視力測定してません)じゃあ、そっちも測りましょうか。その後、説明しますね」

これで、0.7以上の裸眼視力が出ていればよかったのですが、先にやった方は、裸眼0.5どまりでした・・。-1D狙いですが・・。

息子さん(with ガム)「こ、これはどういうことでしょうか!?」

B「年齢のこともありますし、問題ないですよ!両目で見て不自由がなければ良いのです。手術前より十分に見えやすくなっておりますし、また落ち着いた後、見え方に不満があれば、その距離に合ったメガネを合わせればいいんですよ!もう少し様子を見てください!手術は問題なく出来てますから」

我ながら、口調は丁寧ですが、声の音量が大きくなり、声色にイラっと感が含まれていたような気がいたします・・・。非常に反省しております。

その後、私の声色を察した息子さん(with ガム)が「いやいや、失敗とかそういう意味でいたわけじゃないんですよ。単に気になって聞いてみただけです。」と少し引いてくれたお蔭でその場は収まりました。

Bの精神面の未熟さが露呈された瞬間でございました。

まあしかし、手術医としては、手術自体全く問題なく施行し、満足を得られても良い状況において、思わぬ非難、もしくは不信な言葉を掛けられると精神的ダメージは大きいですねぇ。改めて、やり取りを読み返してみると、私ももっと冷静に対応すべきでしたし、まだまだ未熟でございます。ガムが私のイラツボに嵌っておりましたので、どうか神様許してください。

占いでも指摘されたということは、院長就任後、数年経過し、上司に怒られたり諌められたりする機会も無くなって久しいので、こころのどこかで天狗になっているのかも知れません。こうなっては没落の始まりでございますので、厳に戒めて今後の診療に当たる所存でございます。因みに、占いと言っても、オセロの中嶋ちゃんのように、占い師の方に貢いだりしておりませんのでご心配なく。

本日は以上でございます。