眼科手術開業医がLASIKに参入するスキーム by A

B先生がLASIKについて話題を出されましたので、ひさしぶりに投稿してみます。B先生が言われますように、本来、屈折手術は眼科医のものであるべきで、実際、手術の導入や規制については学会が主導しているわけですが、事実上、一部の美容系、全国展開のクリニックにより、LASIKの症例はほぼ独占されているのが現実です。

では、何故こうなっているかと言いますと、いろんな理由がありますが、まず、参入するには投資額が大きいことがあります。器械と場所を合わせると一億は必要ということで、よほどの余力がないと難しいです。

15年ほど前、LASIKが認可された時、全国で既存の眼科クリニックからの参入が相次ぎました。実は筆者もそんなクリニックのひとつです。導入当初は物珍しさ、地域広告の効果もあり、そこそこの患者さんを扱うこととなりました。

設備投資、ランニングコストのすべてを考えますと、年間2000万の売上くらいが損益分岐点になってきます。当初、価格は一眼あたり20万くらいでしたから、年間100眼でペイするということになります。それだったら余裕と、始めたLASIKでしたが、実際、自由診療で両眼40万の患者を集めるのはたやすいことではありませんでした。

多分、全国100施設ほどのうち、半数くらいは一度も黒字化することなく、稼働を停止するにいたっています。

最初の5年くらいはそれでもまだよかったのです。美容系の参入がなかったことにより、価格がそれなりに維持されていたからです。ところが、開始早々、一部のクリニックが両眼14万という(当時としては)破格の価格を打ち出し、地方であるにもかかわらず、年間6000眼の件数になったということがありました。

年間6000眼だと、売上は4億2000万となりますので、損益分岐点を超えるどころか、白内障の日帰り手術でもなかなか稼ぎだせない額となります。もちろん、6000眼を一人でまかなうとなると、仕事の100%をLASIKに捧げなければなりません。そのクリニックでは白内障手術など、すべてやめてしまったと聞いています。

ここで「薄利多売」ということが、この業界のトレンドとなってしまいました。そのためには当然、医師が時間のすべてをLASIKに捧げなければなりません。自由診療ということと、術後視力の立ち上がりが早いということで、土曜手術、日曜手術があたりまえとなり、ますます、専業化に拍車がかかることとなりました。

「土日中心の仕事」「手術件数をこなす」「クレーム対応に追われる」などなど、とてもきつい仕事ということになってしまい、生半可ではとても参入できる状態ではなくなってしまいました。

しかし、だからLASIKはあきらめるというのは、眼科医としてちょっともったいない気がいたします。白内障手術を中心に行っていて、LASIKも行える利点はとてもたくさんあります。

1)「自分の娘が近視だけど、ここででも手術やってくれるの??」という、患者の家族を取り込める。信用度アップにつながります。

2)「右目と左目の見え方が違うけど、なんとかならん??」という白内障術後不同視の患者には、LASIKによるタッチアップという選択肢を提示できます。

3)「多焦点レンズで見え方はどうなる??」という患者さんの術後、万一の屈折ズレの場合、タッチアップを自分の施設でできます。信用度アップになります。

4)「コンタクトはどうしてもつらい」という高齢者、ドライアイの患者さんをLASIKしてあげると、とても喜ばれます。「これだったら、もっと早くしておけばよかった!」という患者さん。LASIKの患者さんの中には、このように、心底から感謝していただける方もとても多いので、医師冥利につきます。職業倫理のアップにつながります。

では、どうすればもっとLASIKに手軽に参入できるでしょうか。それは、B先生へのコメントでも書きましたように、共同利用しかありません。海外では、あたりまえのように行われている、施設の共同利用が、何故日本では行われるのが少ないのか、考えてみる必要があります。

それは結局のところ、保険診療だからです。保険診療を行う以上、売上は施設に入ってきますので、その分け前をどうするかについて、けんけんがくがくの議論となり、物別れに終わってしまいます。施設の管理医師が経営者となり、利用医師は勤務医にならざるをえません。「それだったら、自分が関与することなく、手術そのものを依頼すればすむじゃん、こっちも忙しいし」てことになるのがおちです。

しかし、LASIK自由診療ですから、保険診療の縛りはありません。医療法により、診療所の管理医師は必要でしょうが、売上をどうするとかは、たとえば、連れて行った医師が自由に患者に請求するといったことも可能なのではないでしょうか。

そこで、ビジネスモデルとして、以下のように考えてはどうでしょうか。エキシマレーザー+フェムトレーザーを設置し、簡単な検査、説明場所、受付などを附属させた診療所を交通の便の良いところに作ります。投資するのは共同利用を予定する医師で、総費用を利用医師で割った値が個人の負担となります。1億円でできると仮定すると、10名利用の共同施設の場合、各自の負担は1000万円となります。

しかし、1000万ではちょっと敷居が高いので、たとえば300万くらいを入会金として支払うのはどうでしょうか。その場合、中心となる医師は多く負担し、メーカーなどにも出資を促します。ただ、医療の株式会社化との批判を受けるかもしれません。

医師は自由に自分の患者を連れて行って、LASIKを行いますが、代金については医師個人が患者と直接契約して決めます。ただし、施設の維持管理費用が必要ですので、一眼あたり5万円(例)は施設に収めるものとします。手術当日の点眼薬、患者説明職員の費用などなどは、ここに含まれます。もちろん、術前の詳しい検査も必要に応じてこの施設で行えます。

LASIKを始めるにあたり必要な医師の訓練は、その施設において、担当医師、メーカーが責任を持って行うこととします。その費用は入会金に含まれます。

これだったら、自分でLASIKを始めようと思いませんか?みなさんのご意見をお聞かせいただきたいです。