第36回眼科手術学会報告 by B

昨日、PC遠隔操作の劇場型犯罪を犯した容疑者が逮捕されましたね〜。
いかにも!という風貌ではありますが、僕が何よりビックリしたのが、「猫カフェ」なるものが存在するということでした!

やはり東京は世界の最先端都市ですねぇ。秋葉原やアニメを始めとする日本のポップカルチャーを一部の外国の方が「Cool Japan」と評価してくださっているそうですが、先端部はここまで来ているのですね・・・。驚きました。地方に住んでいるBとしましては喫茶店に猫がウロウロしているなど、想像を超えた世界です・・。

あくまでも片山氏は容疑者でありますので、犯人との断定はできませんが、取りあえずの感想としましては、仮想空間であるネット世界に依存し現実空間である人間社会に適応出来ない若者は、斯様にモンスター化してしまう恐れがあるのですね。ウチの子供も含む、もっと若い世代は、更にネット世界に触れておりますので(ウチの一番下の5歳の子でも、既にiPadで色々検索して自分で楽しんでおります)、更に強烈なモンスター化を遂げる人も出てきそうです。

そう考えると、医療のIT化が進み、電子カルテ上のデータを複数の人間が共有できる環境になったとしたら、情報の流出や書き換えなどの問題が出てくる懸念がありますね。ITモンスターにかかればイチコロじゃないでしょうか。IT化の趨勢は最早誰にも止められませんが、恐ろしい時代が到来します。

さて、先月25日金曜日〜27日日曜日まで福岡での眼科手術学会に出席してまいりましたので簡単に報告させて頂きます。

金曜日の午後から福岡入りしたBが聴講したのは、

1.一般口演 白内障術後成績
2.一般口演 トーリック、多焦点IOL
3.イブニング アルコンエクスプレスのコツ
4.一般口演 眼内レンズ縫着術、強膜内固定術
5.一般口演 眼内レンズ度数計算
6.ランチョン 感染症対策と手術コスト削減
7.インストラクション IOL強膜内固定術

でした。他の時間は、ダベッたり、器械展示場をウロウロしておりました〜。

1.一般口演 白内障術後成績
S社のnew IOLの使い心地の演題がいくつかありました。かなりIOL、及びインジェクター使用感が硬いようですが、角膜2.4mmからでも入るようで、そこさえ気にしなければ問題なさそうです。日本発のIOLなので、応援してあげたい気持ちになりました。

Cat ope界の重鎮、K大S教授が、「創口の大きさになんでこだわるのか?」「本当にワンピースアクリルレンズが良いのか?3ピースの方が良いんじゃないか?」と根源的な問題提起があり、深く考えさせられました。新しいものに飛びつき、流行りにとらわれがちな一般眼科手術医に常に冷静な一石を投じてくださりますねぇ。BはS教授の隠れファンであります!しかし、大御所に根源的な質問をいきなり投げかけられた演者の先生はお気の毒であり、Bもその立場になったら・・と考えると震えがとまりません・・。

白内障術後1か月までに、50%の方がPVD(後部硝子体剥離)を起こしているという事は、今さらながら勉強になりました。

2.一般口演 トーリック、多焦点IOL
ここでは、「角膜後面乱視」についての話題が勉強になりました。まだ、こうすればよいという式は存在しませんが、トーリックIOL使用時の術後残余乱視に角膜後面乱視が絡んでいることは明らかなようなので、今後の検討の結果が待たれるところであります。角膜前面乱視は加齢により倒乱視化することは良く知られてますが、後面乱視は生来ほぼ不変であることはマメ知識となりました。

3.イブニング アルコンエクスプレスのコツ
これも実際の映像が多く、とても面白かったです。エクスプレスを用いた手術は手術手技自体は確かに簡便だが、あまり舐めてかからない方が良く、術後管理に関してはTLEの方がむしろ、切糸によって調整できる分、やりやすいとの意見もありました。B的には、多分、このデバイスを用いた手術は今後進化していくと思います。

4.一般口演 眼内レンズ縫着術、強膜内固定術
強膜内固定術に皆興味津々のようでございます。もちろんBも。やっぱり従来の縫着術は、糸をループに結ぶのが邪魔くさいし、キレイに固定しているつもりでも糸の位置によっては傾斜を生じたりしているので、IOLループをそのまま固定する術式は魅力的にうつります。O先生が多焦点IOLを強膜内固定し、バッチリ視力が出ていたのはビックリしました。あれを見せられると、マスターしたいなと思いますです。

5.一般口演 眼内レンズ度数計算
Bの一番の注目は、やはりLASIK術後のIOL計算式についてです。Bのクリニックでは、Haigis-L式で今のところ、全て狙い通りに行っております!・・・が、やはりたった一つだけの式というのは不安がありますので、出来れば複数の式から多数決でIOL度数決定したいところでございます。今年もすでに1例LASIK術後白内障がありましたが、必ずや増えてくるのがわかっている症例だけに、準備が必要でございます。

B的にはかつてブログで述べましたが(OKULIXの有用性 by B - 眼科手術開業医の戯言)、光線追跡法のOKULIXに期待をしておりました。Bがデモした際の結果ではイマイチでしたが、現在は前眼部OCTのカシアにも搭載されておりますし、カシアならスピーディーに角膜形状の測定も可能でしょうから、更にOKULIXの正確性が増しているのでは?と期待しておりました。しかし、そのような発表はなかったですねぇ・・。

今回の学会では、豊富にLASIK術後白内障症例が存在するK大が自験例から、既存式(Double-K法)をそのまま使用するのではなく、角膜前後面比に応じて目標屈折値の補正を行った方が精度向上につながるという話でした。まぁ、正直、我々のような一般手術開業医がやるには手が込んでおりますし、まだまだ研究段階という印象です。

現在、Haigis-L式をはじめ、術前の角膜曲率が不詳であっても計算できる式は何個かありますが、その中ではHaigis-L式の他では、N社のIOLステーションに組み込まれている「Camellin-Calossi式」なるものが結構良いそうです。IOLマスターにもその式が組み込まれれば、更に使いやすくなりますがねぇ。

6.ランチョン 感染症対策と手術コスト削減
硝子体手術界の大御所T先生が主にコストの点について話しておられました。現在、硝子体手術のコストがグングン上がっており、本当にディスポ製品をディスポ使用していたら、赤字になってしまう。「ディスポ製品」と書いてあっても、実際には「単回使用が望ましい」とされているだけで、義務付けているわけではないので、しっかり滅菌をして2回以上使うのは止むを得ないのではないか。。。という話だったと思います。

ただ硝子体手術機器の「しっかり滅菌」となるとプリオン滅菌対応が必要となりますので眼科手術における感染対策について その弐 by B - 眼科手術開業医の戯言、これまたコストがかかります。いずれにせよ、ある程度体力のあるクリニックじゃないと、硝子体手術に手を出すのは難しいご時勢になりましたね。

7.インストラクション IOL強膜内固定術
このコースも、かなりの人手でございました。Bも機会があれば是非一度、この術式で二次挿入をしてみたいと思っております。

ただ、手術介助をDrがやってくれる大病院などでは良いのですが、ほぼ一人でオペをしなければならない一般手術開業医的には、「助手の力をほぼ借りずに出来る術式か?」というのが重要ポイントでございます。Dr1人なら使える手は2本ですが、2人なら4本となります。例えば助手の先生が顕微鏡下でループを把持することが必要不可欠であるならば、従来の慣れたやり方の方が良いのかも知れません。まぁ、何でも慣れと工夫で何とでもなると思うのですが、こと2次挿入となると慣れるほどの症例数がないのが頭の痛いところです。

あと、専用の器具を購入せねばならない所も若干ネックですねぇ。年に1、2例しかないので・・。

取りあえず、Bはこの術式に将来性を感じるので、一回器具を買ってトライしてみようと思っております。またその時は報告いたします!

器械展示ですが、無散瞳状態で200°もの眼底画像の得られる、Optosの廉価版が出ておりましたね。いやぁ、凄い技術ですね〜。Bのクリニックでも一応導入の方向で考えております!この器械は、何より職員教育に役立ちますね。ある程度の周辺部まで職員も見れるわけですから、メリットは大きいと思います。ただ、既にOptosを導入されたクリニックの先生から、「飛蚊症の患者さんを撮影し、画像上は問題なかったのでそのまま返したら、数日後に剥離を来した。画像上のまつ毛のエリアに実は裂孔が隠れており、見逃してしまった・・」との恐ろしい話を伺ってしまいました。やはり、所詮は器械。油断は禁物ですね。少しでも疑わしい場合は、しっかり散瞳して自らの目で確認せねばなりません。

あと、Bの視線が釘付けになったのが、先のA先生のブログコメントでも触れました、Z社のフェムトセカンドレーザーVisuMaxです。まずはこれ1台でReLEx-SMILE施行可能です。

ReLEx-SMILEとは、LASIK嫌いのK大S教授が推奨しておられる屈折矯正手術法です。フェムトセカンドレーザーによる照射で、角膜実質層に角膜レンティクルを作成し、4mmの角膜切開創から抜き出すことによって屈折矯正を行います。

そして、VisuMaxがバージョンアップすればレーザーによるCCCまで可能になるとのこと。A社LenSxのようなレーザーフェイコは無理っぽいとのこと。

ここからは術者の好みですね。レーザーによる水晶体分割までを望むならば、当然LenSxですが、正確正円CCCが出来れば良くて、核処理は自分でやることにすればVisuMaxということになります。

すなわち、LASIKではなくSMILEにし、レーザーCCCまででOKとすればVisuMax1台で事足りることになります。これは、これから始めようと考えている術者にとって魅力でございますね〜。実際に動き出してからの成績には要注目と思っております!

本日は以上でございます〜。次回は、前に書くと言ってた粘弾性物質や白内障マシーン設定値の考え方について述べるつもりでございます。