多焦点IOLのfive C's by A

今年も4月にサンフランシスコで行われるASCRSへの参加はかないそうにありませんが、メールで知らせてくれる速報を楽しみに読んでおります。中で、多焦点IOLの5C'sということが言われており、とてもわかりやすいお話ですので、ちょっと引用させていただきます。

多焦点レンズを使って、患者さんから不満を訴えられるということを経験されたドクターは多いことと思います。事情は洋の東西を問わず同じで、特にアメリカではプレミウムレンズと称して、なるべくそちらへ誘導するようなビジネスもしているらしいので、対策にも身が入っております。

今回発表されたのは、ロングアイランド(NY)で開業するDonnenfeld先生で、注意すべき五つのCということでございました。すなわち、

1.Cylinder and any refractive error
2. Corneal surface
3. Centering of an IOL
4. Capsular opacity
5. CME and any other fundus disorders

ということで、単なる語呂合わせですが、とても覚えやすいので、臨床の現場で思いだしやすいという気がいたします。やっぱり1が最も多い訳ですが、ちょっとした乱視や屈折異常は意外にSPKなどで生じていることも多く、念入りに治療することにより改善することもあります。

センタリングはどのタイプの多焦点IOLでも重要で、術後に偏心を認めた場合、アルゴンレーザーによる虹彩整復術が有効との報告もあります。これは、虹彩の収縮を利用して整復する方法です。もちろん、ちょっとした後嚢混濁が特に回折型の場合影響しますので、術中のクリーニング、あるいは術後早期のヤグレーザーが有効です。

多焦点レンズ挿入後不満を訴える患者さんでは、これらを胆念に精査し、患者さんと手を携えて解決していく決意を示すことが重要であると、Donnenfeld先生は力説されております。

我が国に多焦点IOLが導入されて5年くらいにはなるでしょうか。先進医療で扱っている施設も増加の一途をたどっています。初期の屈折型リズームは昨年暮れに打ち切りとなってしまい、今ではリストア、テクニスマルチの回折型が幅をきかせているようです。

回折型は光学系に無理があるからか、どうしても解像度が落ち、臨床上、コントラスト感度の低下として現れます。また、明視域が狭いので、ちょっとした度数のずれが裸眼視力低下に結びついてしまい、とても難しいレンズです。その点、屈折型は球面レンズの組み合わせですから、解像度は単焦点レンズと同じで良好です。しかし、ご存知のように、ハロ、グレアが時に耐えられないほど強い欠点があります。

不愉快な光輪が何故出るかといえば、2焦点の組み合わせで発生するレンズの移行部が関係しているとの説があります。リズームはなんとゾーンを5つに分けておりましたので、この移行部分がすごく多く(長く)、これが欠点を助長していたのかもしれません(だから普及しなかった)。

最近一部で人気のあるOculentis Mplusでは、2分割ですので、移行部が少なく、ハロ、グレアが気にならないレベルにまで少なくなっているのかもしれません。

その意味では、昨年暮れに登場したHOYAの屈折型も3分割ですので、比較的副作用が少ない可能性があります。実際、数眼に使用してみたところ、とてもよい感触を得ております。若くて比較的瞳孔が大きな人では特にお薦めです。

多焦点IOLは難しいことがとても多いわけですが、患者さんの要求にはまるととても喜ばれますので、こちらもやりがいが出て来ます。five C'sを思い出しながら、落とし穴にはまることなく、切り抜けてゆきたいと思います。