再び弧状ブレード by B

いやはや、早いものでもう4月ですね〜。前回ブログで「メスと粘弾性物質の事を書く」と宣言しておりましたので、遅ればせながら書かせて頂きます。

Bは角膜上方切開でオペをしております。数年前まではいわゆる斜めからの「BENT」(between nine and twelveですかね?)切開でしたが、トーリックIOLが登場してから、色々な意味で惹起乱視が読みやすい上方からの切開にしております。

角膜切開サージャン、特にボリュームサージャンと言われる程の症例数をこなしておられる先生方のほとんどは耳側切開だと思います。Bも耳側切開に憧れ、耳側切開からやっていた時期もありましたが、右と左で顕微鏡やフットスイッチなどの位置を変更せねばならないのがどうしても邪魔臭く、結局患者様上方にデンと居続けられる上方からの切開に戻ってしまいました。

耳側切開でやっておられる先生方は、オペ室を2つ(右部屋と左部屋)作って行き来される方式や、右ばかり並べて終了すると、顕微鏡などの位置を変更し、左ばかりやるやり方がメジャーだと思いますが、オペ室もスペースの関係で1つしかなく、また、Bのクリニックは未だに自転車操業で、手術待ちはほぼなし(希望すれば数日後の手術日でも可)で、患者さんのオペ日来院時間は、手術日が決定次第、早いもの順で伝えておりますので、右右右・・・、左左左・・・と並べてやるのは困難な状況でございます。

まぁ、アニキ先生のオペ見学に行った際、患者さんの強主経線に合わせて、左右に関わらず「上方」「耳側」と自在に顕微鏡やフットスイッチの位置を変え、やっておられたので、工夫次第でどうとでもなるのですが・・。

自分の中で、上方にこだわる一番大きな理由は、「上眼瞼」の存在です。当院はオペ直後より眼帯なし(保護メガネ帰宅)でやっており、上方には「瞼」という天然の要害がありますので、眼帯しているようなモノという安心感があります。特に昨年から始めた両眼同時白内障手術の希望者が結構多い今日この頃なので、瞼で角膜切開創が覆われているのは感染予防という観点からはメリットだと考えております。エビデンスがあるわけではないので、気分の問題かも知れませんが。

で、角膜切開創を作成するメスは、かつて非常に高い評価をして使っていたマニーの弧状ブレード(弧状ブレード by B - 眼科手術開業医の戯言)を再び使用しております。前のブログを久々に読み返しておりますと、3年前になるのですね〜。光陰矢のごとしです。

そもそも、「弧状ブレードを使っていたのに何故ストレートのスリットに戻したのか?」と言いますと、弧状ブレード使用時、術翌日所見で、創の端っこから僅かにリークを認める症例が何例かあったために、「やっぱ、ストレートでキッチリとハイドレーションをして創閉鎖した方が安心かも・・」と思ったわけです。それでしばらくマニーの2.4mmストレートスリットナイフを使用しておったのですが、これもアニキ眼科見学の際、アニキ先生が2.65mm弧状ブレードをご機嫌に使用しておられるのを見て、「久々に使ってみようか・・」と思い、やってみたところ、やっぱり何と言っても術終了時の前房安定性が抜群によいので、手術時間短縮にもつながり、再び虜になってしまいました〜。Bは2.5mmの弧状ブレードを使用しております。

正直、何例かは昔にBが感じた「術翌日の創端からのリーク」を認めますが、デスメ皺や眼圧に左右差が出るほどリークするわけではなく、全例術2日目には閉じておりますので、それ程気にしないことにいたしました。創端からのリークは、創の端が強膜よりになってしまったときに多いような気がします。意識的により角膜よりに創を作成し、かつ、トンネルを長めに取るように心がければゼロにすることも可能と考えております。

次に粘弾性物質です。Bの粘弾性物質使用は以下の変遷をしております。

・開業当初 (全例)ビスコート+中分子粘弾性物質のソフトシェル、IOL挿入前は中分子粘弾性物質のみ
・数年前からは (全例)ビスコート+ディスコビスクのソフトシェル、IOL挿入前は中分子粘弾性物質のみ
・最近は  (全例)フェイコまでディスコビスク、IOL挿入前は高分子粘弾性物質のみ

粘弾性物質と言えば、ヒーロンを始めとする高分子がメジャーだと思いますが、高分子の場合、ハイドロの時、一緒に粘弾性物質も眼外に出てしまい、前房が虚脱してしまうことがあります。点眼麻酔でやっておりますと、これが痛みの原因に成りかねないので、前房形成能はやや落ちますが、眼外に脱出しにくい中分子粘弾性物質を愛用しておりました。

それが、ディスコビスクの登場で、単純に「ビスコートとディスコビスクでソフトシェルすれば最強やん」と考え、最近まで特に疑問も抱かずそれでやっていたわけでございます。正直、この組み合わせでやっておりますと、最後の粘弾性物質除去が一苦労で結構な時間を掛けて吸引しておりました。

昨年、当ブログにもコメントを頂いたことのあるS先生のクリニック及びオペを見学に行った際、S先生が高分子粘弾性物質(ヒーロン)1本のみでサクサクと華麗な手さばきでオペをされているのを見て、ようやく洗脳教育から解き放たれました!!

すなわち、Bの研修医の頃は、「角膜内皮細胞保護」が学会トピックであり、「角膜内皮を保護しないとブラス(水疱性角膜症)になっちゃうぞ!」というのが頭にこびりついていたのであります。それが全例ソフトシェルに繋がり、最後にはビスコートとディスコビスクのソフトシェルという超重装備でオペをやっていたわけですが、S先生のオペをみておりますと、ヒーロン一本のみなら、実に快適そうにオペが進行していきます。

そこで洗脳から解き放たれました!!

「そや!あの頃はフェイコマシーンも未熟で超音波時間も長かったので角膜内皮保護が重要な話になっていたが、今はフェイコマシーンも進歩し、オペ及び超音波時間もかなり短くなっているので、通常の症例なら、ソフトシェルせんでもええんや・・・」

ほとんどの先生にとって、至極当たり前のことを、したり顔でブログに書いている自分が恥ずかしいですが、本当に「ソフトシェルをしないとアカンのや」と思い込んでおりました〜。更に「感染対策」に目を向けますと、最近の流れでは「粘弾性物質の残存」がマイナス方向に働きますので、より抜きやすい高分子粘弾性物質の方が良いですよね。(^^)

S先生は上方強角膜一面切開だったのですが、角膜切開のBは、ハイドロ時の前房虚脱が嫌なので、高分子一本ではなく、「フェイコまでディスコビスク、IOL挿入前は高分子粘弾性物質」という形にしております。これでもだいぶん手術時間が短縮されましたね〜。ハイドレーションがほぼ不要な弧状ブレードと合わせますと1分くらい短縮された感があります〜。

本日は以上でございます。先生方も、メスや粘弾性物質に関するコダワリなどございましたら、コメント頂ければ幸甚です〜。