iLASIK by A

今日は2020年東京オリンピック決定という、うれしいニュースがありました。前回は1964年、小生は中学生でした。テレビも白黒がやっと普及したころだったような記憶があり、3C(自動車、カラーテレビ、クーラー)はもっと先のことです。しかし、この頃から日本の戦後が終わったとされ、先進国の仲間入りが許されたような感じでした。オリンピックの起爆力はすごいものがあります。これで日本再生が果たされるのではないでしょうか。

2020(twenty twenty)とはまたよい語感ですね。われわれ眼科医にとって、とてもうれしい視力1.0ということですから、よろこびもひとしおです。

私の施設では白内障手術、硝子体手術、屈折矯正手術が3本柱です。まあ、今時の眼科手術開業医は、当然のようにこれらの技術をこなされていますが、私が開業した頃は、これらを一人で独立して行うこと自体、とても珍しいことでした。時代は大きく変わって来ています。

2000年にLASIKを導入した当初、フラップの作成はもちろん機械式のケラトームでした。ケラトームもその後10年のうちに3世代の変遷を経ています。個人的にはLASIKに関する限りケラトームで十分で、フェムトは必要ないと思っておりました。科学的論文でももちろん、ケラトームとフェムトの間に差はありません。しかし、一部の施設でフェムトの利点を大きく宣伝しており、一般マスコミでもフェムトの利点が強調される傾向にあります。機械式ケラトームでは営業的に不利ということを日々実感いたしますので、やむなく今年の春、フェムトセカンドレーザーiFS(AMO)を導入いたしました。導入後数ヶ月を経過しましたので、利点などをちょっと述べてみたいと思います。

当院のエキシマレーザーは10年前の導入時と同じVISX Star S4 IRです。この器械、今でも多分、世界的に見て普及率は結構高いと思います。しかし、その後続々と発売された機種に比べ、レーザーの出力の点で見劣りするのはやむを得ません。同じ度数の治療に対して、よけい時間がかかります。しかし、10年前の器械が今でも通用すること自体、すごいことだと思います。多少のバージョンアップを繰り返すことにより、現行機種として通用させていることは、ユーザーにとって好ましいことです。

たとえば、2005年頃発売された他社のより新しいエキシマレーザーは、数年前に新型が発売されると同時に、メンテナンス不可になったといいます。そのため、その機種のユーザーは新しく買い替えるか、手術を止めるかの判断を迫られることになりました。VISXは一例ごとのクリックフィーがネックと言われておりましたが、これがあるからこそ古いユーザーを切り捨てられないとすれば、多少ランニングコストがかかっても結局は安くつくと思われます。もちろん、今後新しく購入する場合の選択肢として強く推薦するということではありませんが。

さて、iFSを使い始めてから最初の10眼は、メーカーの指導員がついてあれこれと教えてくれます。10眼をつつがなく終了しますと、「認定医」として登録されるようです。

直近に使っておりましたモリア社のSBKに比べ、iFSでより薄く切れるということではありません。ただ、iFSでは中央部と周辺部がほぼ同じ厚さで切れるのに対して、SBKでは周辺部がやや薄くなります。結果、術中のフラップの戻りは明らかにiFSの方が確実で、安心感があります。フラップの厚みは120μに設定しており、特に問題はありません。

手術の技術的には、フェムトと機械式を比べた時、むしろ後者のほうが簡単という気がいたします。まず時間が短く、数秒でカットいたします。フェムトだと眼球を器械にドッキングするのにより時間がかかる上、レーザー照射の時間も10秒以上あります。眼球を固定する時間もより短いということで、術後の結膜下出血は機械式のほうが少ないです。もちろん、慣れてくるともう少しフェムトの時間は短縮されると思います。

フェムトでは、組織が切断される時に出てくる水分が問題となります。時に、ガスバブルとなり、切除面を覆ったり、前房内に出て来たりします。これは、エキシマレーザーの効果に有意な影響を与えますので、対策が必要です。

幸い、水分は数分で吸収されますので、フェムト施術後少し時間を置くことにより、問題は無くなります。最初は、一眼ずつフェムトとエキシマを行っていましたが、上記理由により、両眼のフェムトを行い、少し時間を置いて後にエキシマレーザーを行うという方法に変更いたしました。なお、フェムトは準清潔、エキシマは清潔操作で行います。

遠視矯正の場合、光学径が9mmきっちり必要です。こんな場合、機械式よりもフェムトのほうが確実に作れるようです。周辺部の角膜を削りますので、機械式ではフラップの戻りがやや不安定になるところですが、フェムトだとそのような心配はあまりありません。

再手術の際のリフティングは、術後早期の場合どちらでも難なく行えますが、フェムトで出来た傷はマンホールのふたのような感じでとてもきれいので、掘り起こしもまた簡単です。

機械式では、ごくまれに不十分な眼圧や刃の不良によると思われる、ボタンホール、薄すぎる不安定なフラップになることがあります。フェムトだとそのような失敗は多分少ないでしょう。ボタンホールでもそのままエキシマをあてるか、後日に再手術すれば済む訳ですが、患者さんの心理を考えた場合、そのような合併症がないに越したことはありません。多分、これが、フェムトが普及する最大の理由かと思います。

ということで、慣れてくるとフェムトから機械式に戻ろうという気にはなれません。やっぱり、新しい技術はそれなりの良さがあると実感しております。