男汁によるデスメ皺について by S

はじめまして。B先生のご好意で投稿させていただくSと申します。

Sは生まれも育ちも関西で根っからの関西人でございます。大学も関西の大学に進学し、卒後4年間は母学で勤務しておりましたが、現在は地方の山奥の病院で忍びながら眼科手術の研鑽を積んでおります。

B先生とは4年前の手術学会で、Sの先輩Drに紹介していただいたのがご縁で、以降、Sは勝手にB先生をメンター指定させていただいております。

さて、現在Sはフェイコマシンのデモ中でございます。今のデモ機は無限号で男汁の破砕効率の良さを体感しております。設定も問題なく決まり、また、男汁20°の45°ケルマンチップにも問題なく移行し、ご機嫌で手術をしていた次第です。

ちなみにSの手術手技は耳側経結膜一面切開(2.4mm)〜フェイコチョップで、順次分割〜乳化吸引(6分割している事がほとんどです)しております。チップは前後の動きとベベル面を合わせるための回転操作(ベベルサイドで中央に核片を持ってきてベベルアップで乳化吸引)くらいで、チップを左右に振るようなことはございません。

しかしながら、術後にメイン創口の内方弁から角膜中央へ拡がる、奇異なデスメ皺を20例中で4例経験致しました。デスメ皺の範囲や形状は共通しており、まるで翼状片の様な感じでございます。視力には影響していない症例もありますが、1例は視力に明らかに影響しております。もちろん、この4例は特に核硬化の強い症例でも術中トラブルがあった症例でもございません。なお、残りの16例は角膜に全く問題は生じておりません。

Sは基本的に気にしい(関西弁で神経質・心配性)なので、1例目のデスメ皺が生じて即、A社担当に問い合わせたところ、「おそらくチップ挿入時に引っ掛けたのでは? その手のトラブル(デスメ皺)は聞いたことがないですが・・・」との返答であり、以降チップ挿入時に細心の注意を払っていた次第です(笑)。

ところがそれ以降も2例、3例、4例とデスメ皺の症例が出現し、明らかに男汁によるものと確信致しました。そこで論文検索をすると、眼科手術21:513-517,2008に杉浦先生らがSと全く同じ術後のデスメ皺について報告しておりました!やはり、男汁を使っている限り一定数の症例で生じるようで、一安心(?)致しました(Sの手術手技に問題があると思い込んでいましたので)。ただ、このデスメ皺はしっかり観察しないと確認できないようなので、実は見過ごされている症例は存外に多いのではないかと愚考しております。

杉浦先生らの考察では、ケルマンチップの重心とTorsionalの回転軸がズレていることが原因とのことでした。そして、男汁20°を12°に変える、スリーブとチップの隙間を担保する(具体的にはハイインフュージョンスリーブの使用 推奨3.2mm切開)ことで回避できるのではないかとの考察でした。

ただ、Sが思うに、いかに弱彎のチップを使っても、男汁を使えば一定頻度で生じる気がしますし、ハイインフュージョンスリーブを使うのであれば、チップ径を変えて縦発振のみでも効率的な手術ができる印象です・・・・。

しかしながら、現在、A社の推しは男汁20°の45°チップでございます。杉浦先生らの論文以降、このデスメ皺に関する議論が無いことを勘案すると、何らかの改善策が講じられたのでしょうか??

つきましては、男汁によるデスメ皺やそれに起因するであろう問題点がございましたら、ブログ読者諸兄のご意見をご教示していただければ幸いでございます。

乱文失礼致しました。