診療報酬改定&経済波及効果 by M

当ブログのファンの皆さん、はじめまして。Mの初投稿です。

もともとは私自身、このブログので投稿記事を楽しみにしていたファンの一人でしたが、アニキ先生からB先生をご紹介いただいたご縁をきっかけに、私も参加させていただくことになりました。A先生、B先生、アニキ先生ありがとうございます。

A先生とは随分ご無沙汰しており恐縮ですが、Mが開業するのを決心したときに図々しくも「ここは是非とも見学したい」と某社の営業マンに頼んで、一番最初に訪れたのがA先生のクリニックでした。
当時Mはまだ32才。見ず知らずの若造であるMを、A先生は快く見学を受け入れてくださり、手術見学を含めて、たっぷり院内も裏舞台までしっかりと見学させていただきました。
今でこそ、開業での日帰り手術は珍しくはありませんが、硝子体手術も含めて日帰りでスマートにこなされるA先生は、当時から多くの眼科医の羨望の的であり、今でもMが目標とする大先生であります。そんなA先生と、この場で御一緒させていただくことを非常に光栄に思っております。この場を借りて、あらためてお礼申し上げます。

私ですが、自院のブログもHPもろくに更新できてないし、どこまで頑張れるかはわかりませんが、匿名投稿の気軽さ?を活かして、アップしてみようと思います。
他の先生方のようにアカデミックな話はあまり得意ではないかもしれませんが、マニアックな話ならできるかな?ということで、ハンドルネームをMにさせてもらいました。


さてさて、我々眼科開業医が2年に一度、戦々恐々として迎える一大イベント、「診療報酬改定」の時期がやってきました。

特に今年は消費税改正を控えていますし、ル○ン○○ス、○イ○ーアといった1本だけで半端なく高っか〜い抗VEGF薬の使用量が全国的にうなぎ登りに増えており、日本における眼科医療費をとんでもなく押し上げている状況下で、今までの保険点数がどこまで維持されるか、消費税増税対策としてどのようなことが行われるかは、非常に気になるところでありました。

まさに心境は、「学業成績が思わしくないまま、複数校の入学試験を受けまくった合格発表待ち」と言うと大袈裟ですかね?
結果しだいで、その後の人生が大きく左右されるという点では、Mはそのように感じております。さすがに自分の受験は遠い記憶ではありますが、Mの年齢になると、「2年毎に我が子達の”受験”がまわってきている親の心境」といったところでしょうか・・・


それで、ようやく保険改正の情報がでてきましたね。
結論からいうと、M的には「眼科医療全体の下げ幅としてはほぼ予想どおりの展開」、ただ点数が下がった手術手技、そうでなかった手技、その下げ幅に関しては議論の余地はあるところですね。

いろいろと噂のあった白内障手術の点数は据置です。
でも点数据置は、消費税があがるので、実質的にはかなりのマイナスですよね。

特に白内障手術は眼内レンズ代、カセット、ディスポ等々、材料費が半端ないですからね。下記の資料は既出かもしれませんが、参考までにあげておきます。

医療費原価と患者効用値による白内障手術の社会経済的な評価研究
http://www.heip.med.osaka-u.ac.jp/pdf/022010067.pdf

世間一般や他科の医師からみると「短時間で高報酬で数もこなせて眼科ってめぐまれているね」というふうによく言われますが、実際は白内障手術そのものではほとんど利益がでないばかりか、併発症があるようなものだとむしろマイナスにさえなるというのが現状なんですよね。

顕微鏡や白内障手術装置、あるいは必要な検査機器をすべて揃えると数千万以上の出費となりますので、白内障は数をこなさないとペイできないわけなんですが、採算ベースにのせようと思えばけちんぼな設備投資額に抑えても最低でも年間200症例は欲しいところででした。 それが点数改正で1件あたりの報酬がダウンになるとハードルがあがって、採算ラインが年間300症例ぐらいになると撤退を考える施設も増えてくるのではないでしょうか。 そうなると手術をするところ、しないところでの差別化が進み、手術するところでも、さらに勝ち組、負け組がはっきりしてきてくるようにも思います。

今までなら、真面目に切磋琢磨して患者さんの信頼を勝ち取っていけば、「なんとかなるさ」の世界でしたが、他のビジネス同様に「マーケティング顧客満足度」といったことを意識していないと、他との差別化で生き残っていけるかどうかの戦国時代に入ってきているようにさえ感じます。

一方で、少子高齢化により、人口総数は減るものの、今後15年間は老齢者の人口は大幅に増加していきます。
国立社会保障・人口問題研究所の試算では全国平均で、65才以上でみると24%、75才以上で以上でみると実に53%もの人口が増えるとされています。


特に都市部ではその影響は顕著です。郡部や田舎ではすでに高齢化が進んでおり、あまりかわらないところも多いのですが、凄いことになりそうなところも多いですね。ちなみにMのクリニックのある地域では「65才以上の総数が30%ぐらい増加」が見込まれています。
眼科においては「65才未満か、65才以上か」で受療率が数倍以上違ってきますので、人口は減っても病気になる人が増えていくことは容易に想像できます。

そういった側面からみると、今後15年で疾病構造が劇的な変化をしないかぎり、眼科手術開業医はそれなりに食っていけそうにも思えますが、税収とかを考えると国民医療費の総額はおのずと決まってくるので、このままでは結局は「1件あたりの保険点数を下げて帳尻会わせ」は余儀なくされていくでしょう。
つまり「薄利多売をより強いられる」という可能性が高いということなんです。報酬額は上がらないかむしろ下がるのに、単価が低い仕事をもっとたくさんこなさないといけない。仕事がさらにきつくなるということなんです。


「日本の医療は多くのミクロの犠牲により、マクロ的になりたっている」と言われていますが、まさにそのとおりです。
1件あたりの点数の低下はただでさえ諸外国に比べても圧倒的に「薄利多売」の医療構造をさらに助長することになります。
「医療における薄利多売」の影響は、患者サイドからみれば「3時間待ちの3分診療」「説明不足」「誠意を感じられない」「狭い病室に詰め込められるといったことになってきます。 眼科手術開業医的な面からみると、古い顕微鏡で旧式の機械のまま、納入価の安い一世代前の眼内レンズを入れる・・・というモラルハザードを犯さないと経営が成り立たないということになってきて、結局は患者さんサイドの不利益となってくるということでしょうか。

現状で医師に労働基準法を厳密に適応していくと、ほとんどの救急病院は成り立たないですし、看護師、コメディカルも薄給で重労働。そんな状況でも多くの医療従事者は「自己犠牲の良心」で頑張ってきましたが、さらなる薄利多売を強いられると壊滅の危機に瀕してしまいます。
近年、小児救急、産科医療の危機が各地でクローズアップされてきていますが、何もその分野に限ったことではなく、医療全体が非常に危うい状態になってきていることはもっと世間に知ってもらわねばなりません。


ともかく、それ以上にMが世間の皆さんに知って欲しいのが、
医療への重点投資は、かなり効率的な景気刺激ということなんです。

それなのに、マスコミでは事あるごとに「医療費の高騰が国家財政を圧迫するため、医療費の総枠を抑えるべき(=医療費亡国論)」がでてきて、我々医療従事者には諦めムードさえ漂っています。

アベノミクスでも景気刺激のため、積極的な財政出動公共投資がおこなわれていますが、

公共事業 「総額が年間約80兆円で、250万人の就業人口」

医療分野 「総額が年間約40兆円で、350万人の就業人口」

というところが大きなミソです。

保険点数改正による減収は、自分の取り分はともかく、従業員の給与や医療機器、薬品等を扱うメーカーやディーラーさん、医院清掃業や広告ビジネス、果ては飲食業界にもダイレクトに響いてきますので、世の中の景気にも影響してきます。逆に言うと、ここをあげると、「風が吹くと桶屋が儲かる」のごとく、景気刺激となりえるわけです。

しかも医療費総額のうち税金投入部分は半分以下です。残りは保険料であるわけですから、実は10数兆円の税金で350万人への波及効果があります。

医療への税投入の波及効果は公共事業の7倍以上
ということなります。

例えば日医総研の試算では、

医療への税金投入は1兆円なら生産波及効果は6.6兆円、雇用は73万人。530万人/5年の雇用創出が実現可能

との結果がでています。

しかも公共事業よりも医療・介護は、公共事業に比べて、はるかに人件費の割合が多いし、保険点数のアップは全国的に均等にバランスよく配布できるという側面もあります。集めた税金の再配分という点から、もっとも公平な手段というわけです。
これだけ不安要素の多い世の中では、高齢者もお金を貯め込んで使わなくなってしまいがちですが、医療・介護の充実は高齢者の社会不安を軽減しますので、より財布のヒモも緩むことでしょう。 しかも人間の生きるということや健康や若さへの欲求には限りがありません。健康産業として考えても、その経済波及効果はかなりのポテンシャルがあるといえます。

「医療・介護への重点投資」が、アベノミクス「第3の矢」の強力な武器となり得る

ということを、もっと世間の人にわかって欲しいし、そういったことを我々医療業界の人に知ってもらって、どうどうと「医療・介護分野へ重点投資」を主張すべきと、Mは常々思っています。

ただ、闇雲に保険点数をあげれば良いわけではありません。たとえば前述したル○ン○○ス、○イ○ーアに高い点数つけたって、大部分は外資系の利益。日本の国益になっているとは到底思えません。むしろ、他を圧迫してくる悪影響の方が危惧されます。
日本で開発された技術や製品がかかわる分野に着目して、コメディカルや医療をとりまく日本の内需拡大に効果的なところに重点投資すべく、考えていただきたいものです。


眼科手術開業医的には白内障手術に重点配分してくれると嬉しいところなんですが、白内障手術は、前述の文献にあるように高齢者のQOLをあげることによる「社会経済的効果」も大きいものなので、たくさんの手術をこなすことは患者さんだけでなく、「将来の日本経済のため!」という思いで、Mは日々頑張っています。

これからの日本を支えていくには、少子高齢化の中での内需拡大が必要です。医療の高度化による多様なニーズ拡大は、高齢化社会において、もっとも確実かつ、効果的で、しかも社会の安心をもたらす、最大の景気刺激策ということを、Mは何度も強調しておきたいと思います。


ちなみにMは、車は国産車しか買いません。パソコンなどの電脳グッズも、もちろん全て国産です。サ○○ンとがレ○ボなんか使っている従業員をみたら、「非国民! 国賊!!」「国産使え!」と、とことん説教?してます(笑)
スマホが、○ャラ○シーで、キャリアがソ○ト○○クだったりしたら、M的には「市中引き回しの上、拷問・打ち首レベル」ですねえ(爆)

友好国である米・独・伊・仏・北欧等の、日本にはない優秀な製品に関しては輸入販売をおこなう日本法人に利益をもたらすというものであればM的にはギリギリOKですが、できるだけMade in Japanを選びたいものです。

 皆さん、優秀な日本製品を買いましょう!

その一人一人の小さな心がけがこれからの日本を救うことになるのです。
 
最初に気合いを入れすぎると、のちの投稿のハードルが高くなってしまいますので、今日はこのあたりで・・・・