1日平均外来患者数と手術件数について by B

現在、セ・パ両リーグともクライマックスシリーズが盛り上がっておりますね。私は子供のころ、かなりの野球オタクでして、プロ野球選手名鑑を夜寝る前に、お布団の中で、じーっと眺めておりました。私はパリーグの「南海ホークス」というチームのファンでしたが、その当時のパリーグの不人気っぷりは凄まじかったです。

夜のスポーツニュースでも、セリーグの試合は詳細に放送されますが、パリーグは結果のみ、なんてことは日常茶飯事で、こっちも途中経過を聞きたいがために、見たくもない巨人戦をテレビでみていたもんです。

その時代を思い出すと現在は隔世の感があります。昔のパリーグは関東地区3球団(日ハム:後楽園、ロッテ:川崎、西武:所沢)、関西地区3球団(阪急:西宮、南海:難波、近鉄:日生・藤井寺)と固まっておりましたが、特に関西私鉄系がどんどん身売りして、日本全国に散らばったのが功を奏しました。逆に考えると昭和の時代の鉄道事業って、そんなに儲かっていたのですかね〜?

さて、本題に入ります。現在、当院は1日平均患者数は50数名です。で、手術件数はこの4月に週1日→2日にしてから、じわじわ増えて来ており、ここ3カ月くらいは白内障が50〜60件台/月、眼瞼等他の手術との合計では70〜80件台/月ペースです。

正直、「外来患者数の割に手術件数が多い」と言われる事もありますが、素朴な問題提起として1日平均外来患者数と手術件数は比例するものなのでしょうか?

勤務医時代を思い返すと、

  • 月 1日中手術日
  • 火 午前外来・午後外来、レーザー、FAG等(2診制の2診)
  • 水 火曜日と同じだが1診
  • 木 午前病棟、午後検査
  • 金 のんびりデー(検査など。論文読んだり、昼寝してたりしました)
  • 土 月1回程度外来(他の週は実家の医院でオペ等)

てな感じでした。要するに外来は週に2回で、手術は毎週10件程度やっておりました。

総合病院でしたので、開業医の先生からの紹介で「白内障手術希望」で来られる患者さんもおられましたが、そういう患者さんはほとんどが部長宛で、2番手だった私宛はそんなに多くなかったです。外来日は、朝9時から、実質午後4時ころまで診察してまして、50〜70人くらい、多い時で80人くらい診てたと思います。

1日平均外来患者数でみると、開業後の現医院の方が少なくなるわけですが、開業後はほぼ毎日外来しておりますので、1週間の延べ診察患者数で行くと、勤務医時代は100〜160人/週に対し、現在は300人/週となります。実際は親父もチョロっと診療をやってますので、私の診察患者さんは少し減りますが。

という訳で、勤務医時代の感じから行くと、当院の来院患者数に対する手術件数の割合は決して、多すぎではないと考えております。

開業して初めて気づいたのですが、どうやらこの日本には、医者サイドの考え方として、「勤務医の診療」と「開業医の診療」は別のものであるという考えがあるようです。

開業当初の親父・お袋軍団との闘いの大部分の理由はそれでした。よく「お前、大病院時代と同じ感覚で診療してたらアカンぞ!」と怒られ、こちらも反発して喧嘩しました。さすがに最近はないですが。

すなわち、古い時代の伝統的な開業医思考として、

・患者さんはなるべく頻回に医院に来院してもらう方が良い

という原則があります。

医療システム自体が医師にとっては出来高制で、患者さん(老人)にとっては定額制という今から考えると夢のような時代でしたので、医師が行う検査は、医者にとっては収益に繋がり、かつ患者さんにとっては懐も痛まず、純粋なサービスとして受ける事が出来ました。

現在でも、その考えが脈々と続いているようで、たまに他院から当院に流れてきた患者さんに「サンコバ3本」出すと、「え!!!そんなにたくさんもらって良いのですかっ!!申し訳ございません!!」とエライ恐縮される方がおられます。よくよく話を聞くと、「前の先生は有無を言わさず1本しかくれなかった。」との事・・・。

他院で数年前に白内障手術を受けた後、当院で眼瞼手術を受けた方に「じゃあ今度は3カ月後に来てください」と言うと、「私、白内障手術をうけたクリニックに3週間毎に行かねばならないのですが、まだ行かねばならないのでしょうか?」とカミングアウトされた事もありました。勿論、調子が良ければ行く必要はないと答えましたが・・。抗炎症剤処方で延々とfollowし続けるパターンです。

「でも、術後患者さんを皆3週間毎診察していたら、そのクリニックはすごい混んでるんじゃないですか?術後経過は落ち着いているし、3週間毎お顔を合わせていると、だんだんしゃべる事もなくなってくるんじゃないですかね〜?」と聞くと、「そうです。すごく患者数が多くて何時間も待たされます。で、ほとんど会話なく点眼を処方されるだけです。会話があるときは、予約を一回飛ばしてしまった時などで『前は来なかったね』と言ってくださいます・・」とのこと。

両IOL眼で落ち着いている症例でも3週間毎に来院させる為には、教祖様的なカリスマが必要でございます。到底私にそのような才能はありません・・・。その先生はある意味、開業医に相応しい才能の持ち主だとは思いますが・・。

眼科は特異な科であり、手術をすれば治る病気が多いのは他科と比べても大きな特徴だと言えます。逆に、手術をしないと治らない症例を延々と抱え込む「生かさず殺さずパターン」も散見されます。白内障はまあ良いとしても、内反症・翼状片・眼瞼下垂etc...、そのような方はほぼ100%、「手術をしても再発するだろう」「傷跡が残るだろう」といった、手術に対してネガティブな情報が刷り込まれてしまっており、本人的にも「手術をしなければ治らない」とわかっているにも関わらず、前医で刷り込まれた「手術は恐い」という恐怖感とも戦っておられ、実に哀れでございます。

1日平均患者数で手術件数の多寡を論ずるのは非常にナンセンスな事であり、逆に言えば1日平均患者数などは、患者さんをマインドコントロールして、頻回受診してもらうようにすれば、増えるということです。

そもそも午前診9:00〜12:00の受付時間は180分しかなく、1人当たりの診療時間5分としても36人です。実際は、良くお話される方、初診、難症例など、5分で終わらないことも多々ありますので、医師一人で診療できる人数は限られております。医師1人で1日平均患者数が例えば100人以上とかのクリニックならば、手術に費やす精力がかなり削がれるだろうと推察されます。こうなると、医者を増やして対応せねばなりませんね。

最後に、全ての開業医の先生が、頻回受診派ではない事を付け加えておきます!今回は、若干過激な内容であったかもしれません。開業医の先生で気分を害された方がおられたら、お許しください。