今年の白内障手術 by B

しかしまぁ、タイガー・ウッズも大変ですねぇ。

奥さんにゴルフクラブを持って追い駆けられ、車で焦って逃げようとして激突。その後は、浮気系のゴシップが世界中を駆け巡っております。

MAXで愛人13人だそうですが、タイガー・ウッズですよ!!僕は全然構わないと思いますがね〜。

過酷な勝負の世界に生きていて、家に帰れば家庭第一の良い旦那さんなんて事は、女性の幻想でしょう〜。結婚生活10年超えたら莫大なボーナスを奥さんに支払う契約や、いざ浮気問題が勃発すると、自称愛人が顔写真つきでいきなり13人も出てくる国民性を見るにつけ、アメリカという国は、日本人の感覚では計り知れないものを感じます・・。


本業の眼科手術に関してですが、今年もあと3週間ちょっとという事で、少し早いですが、白内障手術の回顧をしてみたいと思います。

エクセルに入力している手術データを見てみますと、今年は現時点で五百数十件の水晶体再建術を施行しました。後嚢破損は4件です。

4件とも詳細に覚えております。

うち2件はギンギンに緊張しておられ、前房が不安定だったので、IA時に創口近くの皮質を吸いに行った際、後嚢を吸ってしまい穴があいてしまいました・・・。お2人に共通していたのが、ギンギンに緊張して、ベル現象で眼球が上転するなら良いのですが、緊張すればするほど、なぜか眼球が下転するタイプの方でした。手元の皮質を吸う際におそらく灌流口が創口で閉鎖された瞬間に、前房が浅くなり後嚢を吸引してしまったと考えます。普通は少し吸引してもバックフラッシュすれば問題ないのですが、ギンギンの分、パチンと後嚢も破けてしまったのでしょう。

とは言え、この手の後嚢破損は小さい穴があいているだけなので、別にどうという事もありません。IOLはinです。

他の1件はブログで動画を公開しましたが、強度近視眼の硬い白内障で、最後の核片を吸引した際、サージがおこり後嚢を破損してしまいました。これは、まさしく油断、気の緩みですね・・・。

もう1件は、現時点で本年No.1の痛恨の症例です・・。しばらく落ち込んでいて、ブログでは初カミングアウトです。PEあり、チン小帯脆弱の患者さんで、実際には手術の手技で後嚢破損を起こしたわけではありませぬ・・。核片を処理した後、IOLを挿入出来ない(挿入しても、しばらく経てば落下する)と判断して、硝子体カッターで残存皮質を嚢ごと処理し、いわゆる「人工的無水晶体眼」にしました。この辺の判断は、その時の状況、患者背景等を勘案して、自分なりにベストの選択をしたつもりでしたが、後でDVDを見直すと、IOL挿入可能だった気もしますし、少なくとも嚢ごとカッターで切除しなければ、後で2次挿入する際に、縫着ではなく外れていないチン小帯部を利用しての毛様溝固定(挿入するだけ)という選択肢もあったはずです・・・。

普段、ストレスなく手術をやっていても、術者たるもの、年に数回はピンチがおとずれます。その時に、いかに冷静に、ベストの選択を瞬時に出来るか・・、この辺の精神面がまだまだ甘いと反省しております。


他に、後嚢破損をしてなくても、困った症例としては、やはり第一にチン小帯脆弱例、第二にIFISです。

チン小帯脆弱例でCTRは3例に使用しました。ブログで報告しましたが、うち1例はCTRで嚢を補強し毛様溝に固定しました。CTRの使いどころは、まだ自分の中でこれと言った判断基準はありません。少なくとも、外傷性の白内障なら、そこそこ広範囲の断裂でも、非常に効果的であります。偽落屑症候群の場合は、進行性だけに何とも言えないです。極端な話、CTR挿入眼の長期経過後のトラブルをある程度経験するまでは、わからないと言った方が正確かも知れませんねぇ。個人的には経験はないですが、想像しただけでも、CTR挿入IOLが硝子体腔内に落下した暁には、それはそれは激闘が予想されますので、PE眼で広範囲外れているものは使用しない方が良いのかも知れません。(まぁ、皆言ってる事かも知れませんが・・・。)

IFISも困りものでございます。マルイジンリングを購入し、2眼に使用しました。装着はどうという事はないのですが、抜く時が厄介ですねぇ。まだ慣れてないせいもあるかと思いますが、ビデオでみるように鮮やかにインジェクターに格納することはできません。IFISが疑わしい方は、核が硬くならないうちにやってしまった方が良いですね。

あと、バーンによる創口閉鎖不全が2例、お恥ずかしい話ですが、残存皮質膨張による再手術が2眼ございました。


一昔前、良く言われていた角膜内皮障害に関しましては、ソフトシェルテクニックによって、ほぼ克服されたのではないかと思います。

現在の私の手技では、ビスコート→オペリード(中分子)でソフトシェルを行っております。ビスコートで前房置換したあと、オペリードは自分の考えるCCCの大きさになるように、注入しております。1人で、「ビスコCCCマーカー」と名付けているのですが、まぁ気分の問題でございます・・・。

当初はビスコートとオペリードHV(ハイビスコ→高分子)の組み合わせでやっておりましたが、ハイビスコですとどうしても、ハイドロの際に、ブリっとまるごと出てしまうことがあるので、中分子タイプの方がやりやすい印象です。特に三好のウルトラハイドロ針導入後は、中分子が良いです。

ビスコートは悪くない粘弾性物質ですが、何と言っても核片などがへばりついたら、チマチマとIAで吸う手間がかったるいです。更に言えば、今年はありませんでしたが、去年は翼状片術後の角膜混濁部の裏側に、そこそこ大きめのエピヌクレアスがへばりついて隠れていたのにオペを終了し、後日、再手術をした症例がありました。もう少しサラっとしてくれてても良いかなぁと考えます。

最近は何となく、低分子粘弾性物質を使用すればビスコートを使用しなくても、1本で行けるのでは??と感じております。低分子と中分子、もしくは低分子と高分子の変則ソフトシェルも悪くないような気がしてきました。どなたかご経験はありますでしょうか??


付加価値IOLは、マルチIOLを10数例、乱視用IOLを10例弱に使用しました。

マルチはブログで報告しました通り、1例、単焦点IOLへの交換がありましたが、それ以外の方はまずまず良好です。1例、術2週間後にYAGレーザーを施行いたしました。

乱視用IOLは、片眼だけ乱視が強いかたは良い適応だと、個人的に考えております。多焦点IOLの適応で角膜乱視が1.5D未満と言われておりますが、私の調べたデータでも、まさに同じでした。すなわち、1D未満の角膜乱視と1〜1.5Dの角膜乱視では、遠方裸眼視力に有意差はないわけでございます。逆に言うと、乱視矯正IOLを1.5D未満の乱視の方に使用すると、通常のIOLでも裸眼1.0出たかもしれないのに・・と言う事になります。2D以上の乱視を(過度の期待を抱かせずに)減らすというコンセプトでやれば良いIOLだと思います。私Bは「メガネがかけやすくなります。」という腰の引けたムンテラをしております。


肉眼でのICCE→顕微鏡導入→ECCE→PEA→小切開化と進化してきた白内障手術ですが、次世代の新手術方法は、やはりチン小帯脆弱例の克服だと考えます!すなわち、核の吸引がチン小帯の脆弱性に左右されない手術方法。これが良いですね。

妄想では、嚢と核の分離は水流ではなく、薬物(?)などで行い、いわゆる昔一瞬はやりかけたという噂のフェイコフリップ法(でしたっけ??)のように核を嚢外、もしくは虹彩上に出してから、処理するのが良いような気がします。

実は、今週木曜日にもスーパー難症例が控えております。全盛時のマイク・タイソンと対戦前のボクサーのような心境です。神様、どうかこのまま無事に何事もなく、お正月を迎えさせてくださいませ・・。拝(-人-)拝