異常瞳孔反射 by A

このブログでB先生が問題提起されたIOL術後患者さんの「光が変に見え、動き回る」との訴えですが、ブログのコメントにtetsuさんが投稿されていますように、ASCRSのメーリングリストでよく問題となっています。やっぱり、これに悩まされている医師は全世界に拡がりを見せているようです。

これは一般的にnegative dysphotopsiaと呼ばれていますが、適当な日本語訳がありません。negativeとは「否定的」という意味ですがここではたぶん「不快な」ということで、photopsiaは「光視症」との訳語があり「光が見える」という意味であり、それにdysがつくと「異常」という意味になります。

全てを勘案して意訳すると、「不快光視現象」とでもなるのでしょうか。眼内レンズのエッジグレアがもっとも多い原因と思われます。

これは不快光視を訴えた症例の一つです。IOLの下半分が前嚢により覆われておらず、露出しています。この部分のエッジグレアが原因と思われます。
同じ方のもう片眼ですが、こちらは全周がきっちりと前嚢で覆われています。前嚢で覆われると、その部分で濁りが生じ、エッジの光学特性が低下いたしますので、不快光視を自覚しなくなるものと思われます。

このことからも、IOL光学部はCCCにより確実に覆われる手術が心がけられるべきと考えます。特に下のエッジが要注意です。

さて、最近のASCRSのメーリングリストに、下のような投稿があり、話題を呼んでいます。一部抜粋して貼り付けます。IOLの具体名は伏せています。

The xxx IOL is not perfect and while it is powerful and predictable, it has some actual or potential drawbacks. To me, one of the most significant is the appearance of what I like to call "terminator eye". That is the extremely noticable reflection that you can see from a mile away on some patients with xxx IOL. I have one patient who despite a 20/20 uncorrected outcome claims that the cosmetic appearance of this lens has "ruined her life." I now mention the potential reflective appearance of this IOL as part of my informed consent.

これに対して、以下のような意見が出てました。

The annoying reflection occurs because of an enlarged Purkinje III image. The reason this refected image of lights is larger than in a silicone IOL, is because the anterior IOL surface of the acrylic lens is flatter. It is flatter because of the higher refractive index of the acrylic IOL material.

Think of a plane mirror reflecting the image of the light bulb in your room. It will be larger than if the mirror was convex.

要するに、一部のアクリルIOLは非常に屈折力が強く、したがってレンズが平坦であり、また時には前面が凹になり、前からの光をたくさん反射し、それがターミネーターのような人工的に光った眼と感じられることがあるとのことです。「へーー、そんなこともあるのか」と思っていますと、つい最近、患者さんからの強い訴えがありました。

「光を見ると影が動きまわるので、気色悪い。また、友達に見てもらっても、黒目の中が変に光っている」との訴えでした。まさしく、negative dysphotopsiaと異常反射の合併と思われます。

同じIOLを入れたもう片眼は「そうでもない」とのこと。こちらはやはり、下方を含め、光学部の端が前嚢で覆われています。

屈折力の強いアクリル眼内レンズは、特に、CCCの大きさに気をつけなければならないと、改めて実感いたしました。



屈折力の強い素材を使うについては、全体をなるべく薄くして、極小切開からの挿入を可能にしようとの意図があるのでしょう。時代は極小切開ですから、この流れは止むことが無いと思います。そんな中、新たな問題(といえるほどのものではないとのご意見もあることでしょうが)が生じて来ました。幸い、CCCのサイズに気をつけることで、予防できる可能性があります。

時代の進歩とともに、患者の要求も高くなり、求められる技術も常にアップ トゥ デイトでなければなりません。医者にとっても大変な時代ですね〜。ジャンジャン。